恩田陸初のエッセイ作品
2005年刊行。講談社がかつて発行していた月刊文芸PR誌「IN☆POCKET」に2004年1月から10月にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。
装丁はダイヤモンドビッグ社の有名な旅行ガイド『地球の歩き方』を多分にパロった仕様となっている。恩田陸作品のブックデザインとしては、ちょっと変わり種といった印象だ。これくらいそっくりだと、版元には筋を通しているのかしらん。
講談社文庫版は2008年に刊行されている。文庫化に際して、講談社の文芸誌「メフィスト」掲載の以下のエッセイが追加収録された。単行本版と比較して、70ページ強の大幅追加となった。単行本版にはなかった、文庫版オリジナルのあとがきもついてくる。
- 麒麟麦酒横浜工場(2005年9月号掲載)
- 札幌落雪注意(2006年5月号掲載)
- オリオンは新年、東の空から昇る(2008年5月号掲載)
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
イギリスがお好きな方。アルコールが大好き。特にビール派の方。恩田陸はどんなエッセイを書くのだろうと気になる方。酒豪として知られる恩田陸の生態を知りたい方。飛行機嫌いだけど、乗らざるを得なくなって困っている方におススメ。
内容はこんな感じ
根っからの飛行機嫌いを標榜し、海外旅行を頑なに避け続けてきた筆者だったが、イギリス・アイルランドへの取材旅行の日がとうとうやってきてしまう。噴き上げるエンジンの爆音。めくるめく浮遊感。揺れまくる客室内。長時間の拘束。言語に絶する恐怖体験を踏み越えて降り立った異国の地で彼女が感じ、見たものとは。
ここからネタバレ
この人酒飲んでばかりだ
飛行機嫌いで有名だった恩田陸が、決死の思いでタラップを登り、イギリスとアイルランドに行って帰ってきた苦難の日々の記録。やっぱりこの人酒飲んでばかりだなとか、小説もそうだったけど本人も人間観察がシビアだなとか、これまで表に出なかったこの作家のリアルな部分が多少なりともわかったような気がするので、ファンが読むのであればかなり楽しめる。
旅行で一番楽しいのは出掛けるまでの準備の時間。恐怖に震えながらも仕事を片づけ、旅行鞄を選び、持参する書籍を厳選する一連の行為に旅へのワクワク感が醸し出されていて微笑ましく読んでしまった。
文庫版追加エピソードでもビール三昧
文庫版で追加された三篇は、横浜(キリン横浜ビアビレッジ)、札幌(サッポロビール)、沖縄(オリオン・ビール名護工場)の探訪記で、それぞれのビール工場でまたしても飲みまくる恩田陸(ずっとこんな感じである)。
飛行機嫌いの恩田陸なので、札幌への移動はもちろん鉄道。北海道への移動を往復ともに北斗星で移動なんて超うらやましい。ただ、沖縄だけは鉄道で行くことが出来ないので、やむを得ず国内線での移動なった模様。
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