若竹七海の初期作品
作者の若竹七海(わかたけななみ)は1963年生まれ。1991年に『ぼくのミステリな日常』でデビューしているから、来年でデビュー30周年!現在に至るまでコンスタントに作品を書き続けている。代表作はドラマ化までされてしまった「葉村晶」シリーズ、そして「葉崎市シリーズ」あたりかな。
さて、本日ご紹介する『スクランブル』は1997年刊行作品。若竹七海作品の中では、比較的初期に書かれたものになる。単行本版の表紙怖えー。
集英社文庫版は2000年に登場。さすがに単行本版の表紙テイストは不味いと思ったのか、ずいぶんとマイルドな表紙イラストに変更されている。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
学園ミステリ、特に女子校を舞台にした作品を読んでみたい方、1980年代に学生だった方、文芸部にかつて所属していた方、回想振り返り型のミステリが好きな方におススメ。
あらすじ
1980年。高校生だったあたしたち。学校で殺されて死んだ一人の少女……。彼女は何故死ななくてはならなかったのか。事件は未解決のまま十五年が過ぎ、それぞれの人生を送り久々に再会した6人の仲間たちはある真相にたどり着く。あの時、あの場所でいったいなにが起きていたのか。そして犯人は誰だったのか。
今回はネタバレなし!
女子校が舞台のミステリ
とある名門女子校で起きた殺人事件。文芸部の六人の少女たちの学園生活を綴りながら事件の真相に迫っていく。六人ごとに章が分けられていて、章ごとに視点が切り変わる構成になっている。若竹七海は1963年生まれで、1980年には登場人物たちと同じ17歳だった。多分に自身の高校時代へのオマージュでもあるのだろう。女子校育ちらしい作者の経験が反映されていて青春ミステリとしても秀作。
懐かしの1980年代が甦る
登場人物が文芸部なので1980年代の小説がたくさん出てくる。
村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』
栗本薫の『優しい密室』
黒柳徹子の『窓際のトットちゃん』
と、どれも超絶懐かしい。
わたしは、作者よりはちょっとだけ若いけど(笑)、80年代に学生をやっていた本好き人間の自分としては共感度の高い作品だった。ちゃんとアニメオタクの子も居て、しっかりガンダム見ていたりするところも「らしく」て良いなと思った。