北方謙三版「水滸伝」第九弾!
北方謙三版「水滸伝」の感想をひたすら書き続ける月曜日。前回の第八巻に続いて、本日は『水滸伝9 嵐翠の章』である。単行本版は2003年に刊行されている。
祝家荘編がなんとか終わって、ちょっと一休みかな?と、思わせておいて、それでも波乱に次ぐ波乱の第九巻なのである。
集英社文庫版は2007年に刊行されている。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★★(最大★5つ)
強キャラがひたすら無双する話が好きな方、癖の強いサブキャラたちがここぞというタイミングで活躍する話が好きな方、展開の読めない「水滸伝」を読んでみたい方におススメ!
あらすじ
凌辱の果てに死を選んだはずの妻が生きていた。一縷の望みに希望を託し、軍規に叛いて戦線を離脱した林冲は一路東京開封府へと向かう。しかしその情報は青蓮寺の流した卑劣な罠だった。幾重にも張り巡らされた周到な罠の中へ飛び込んでいく林冲は、果たして生還することが出来るのか。そして魯達たちの救援は間に合うのか。
ここからネタバレ
どう考えても青蓮寺の罠
どう考えても青蓮寺の罠なのだが、そんなこと関係ねえとばかりに突撃していく林冲先生。手ぐすね引いて待ち受ける青蓮寺の刺客の皆さんとの三国無双的な「俺強ええええ」的なバトルが燃える。とはいえ、なにせこれは北方水滸伝である。林冲クラスの中核キャラクターでも、何時死ぬか全く予想がつかないだけに、読んでいてけっこうこれがハラハラさせられるのだった。
仲間たちの活躍も熱い!
それでもまあ、魯達やら白勝がわらわら寄ってきて助けてしまうわけだが、ツンデレ(未だデレは見たこと無いが)公孫勝がちゃっかり部下まで連れて助けに来ているのは笑った。これが公孫勝なりの精一杯のデレなのだろう。瀕死の林冲を神業の医術で救い、憎まれ口を叩いてみせる安道全が、病室を出るなり林冲の命を救えたことに感極まって慟哭しはじめるところは地味にいいシーン。北方のオッサン相変わらず上手いぜ。
ちなみに前回で派手に負け戦を演じた聞煥章は死なずに済んだが、肉体的に大ダメージ。後半。梁山泊の糧道たる「闇塩の道」を絶とうする青蓮寺の魔の手が遂に盧俊義や柴進にまで伸びる。絶体絶命の柴進を救わんとする鄧飛の狂気にも似た執念もいい感じなのであった。