ネコショカ

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『葬列』小川勝己、戦慄のラストに痺れる


小川勝己のデビュー作

2000年刊行作品。第20回(2000年)横溝正史賞の大賞受賞作品である。

作者の小川勝己(おがわかつみ)は1965年生まれ。本作がデビュー作となり、以後十数作の著作がある。ただ、ここ十年程は新作が出ておらず、動向が気になるところである。

葬列

角川文庫版は2003年に刊行されている。

葬列 (角川文庫)

葬列 (角川文庫)

 

あらすじ

うだつのあがらない三下ヤクザの史郎。場末のラブホテルで働く明日美。借金で首が回らないしのぶ。外界に対して心を閉ざした少女渚。人生に行き詰まっていた四人が、それぞれの存在意義を賭して乾坤一擲の大勝負に出た。狙いは暴力団浅倉組の大金庫。五億円の現金を武装した組員たちが守る。四人の襲撃は果たして成功するのか。

一般人をメインに据えたノワール小説

ノワール小説。それも平凡な一般人を本作では主人公に据えている。

当初、史郎と明日美の視点で交互に物語が綴られていくのだが、中盤から別の人物の視点が入り込み、途端に落ち着かなくなってくる。チョイ役で速攻死んでしまう登場人物の視点を挿入されても、読み手はついていけないと思うのだ。

それから、これも新人ならではのぎごちなさと言うべきところだが、とにかくご都合主義的な展開が多過ぎる。ノロマで勝負弱いヤクザに過ぎなかった史郎が、何のきっかけも無く天才殺戮マシーンに変貌してしまうのは謎でしかなかったし、そもそも素人四人に壊滅させられる暴力団ってどうなのかと。浅倉組はいくらなんでも弱すぎる(でも、ノリとしては面白い)!

大賞を取るに相応しい力作

しかし、大賞を取るからにはそれなりの理由があるわけで、まず挙げておきたいのがリーダビリティの高さだ。本作はとにかく無茶なお話なのだが、文章のテンポが良く、改行のリズムもいいのか、読み始めると意外にも止められないのである。400頁をほぼ一気に読ませる力は新人としては賞賛に値する。

もう一点は、なんと言ってもラスト一行のサプライズ。静かに予定調和的な終焉を迎えるかと思っていた物語の最後の最後で訪れる凄絶な暗転には痺れた。どうせなら渚の登場をもっと早めて、より多くの描写を彼女に費やしていれば更にその効果は高まったであろうだけにいささか惜しい。しかしこのラストはあまりに見事。

葬列

葬列