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『木曜組曲』恩田陸 五人の女たちが織り成す心理戦


映画化もされた恩田陸の初期作品

1999年刊行作品。「問題小説」に98年から99年にかけて掲載されたものが1999年に徳間書店より単行本化された。恩田陸としては七作目。最初期の作品のひとつである。

木曜組曲

木曜組曲

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最初の徳間文庫版は2002年に登場。解説は映画版の脚本を書いた、大森寿美男(おおもりすみお)が担当している。

2019年に新装版が刊行されている。現在読むならこちらだろう。

木曜組曲 〈新装版〉 (徳間文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

クローズドな空間での女性同士のかけひき、心理戦を主軸としたミステリ作品を読んでみたい方。舞台劇の要素を強く持った小説作品がお好きな方。最初期の恩田陸作品が気になる方におススメ。

あらすじ

作家重松時子が謎めいた死を遂げて四年。耽美派小説界の巨匠であった彼女を偲ぶため、その居館であったうぐいす館に毎年集う女たちがいた。ノンフィクションライター、純文学作家、売れっ子ミステリ作家、編集プロダクション経営者、ベテラン編集者。時子の臨終に居合わせた五人が、その死の真相をめぐり対決する。

ここからネタバレ

閉鎖環境での心理劇

クローズドな環境で少人数の登場人物を動かすのが恩田陸は殊更に上手い作家なのだと思う。『六番目の小夜子』や『麦の海に沈む果実』では学校が、『球形の季節』では谷津という町が、『黒と茶の幻想』ではY島が舞台だった。限定された逃げ場の無い環境で、普段は隠している感情や秘密が、そして欲望が剥き出しになっていく。この辺りの心理描写は抜群に巧い。

舞台劇を見ているような

本作は謎の死を遂げた重松時子が住んでいた「うぐいす館」という屋敷の内部だけで、ほとんどのストーリーが展開していく。登場人物もわずかに五人と、ある意味ではもっとも恩田陸らしいタイプの作品と云えるのかもしれない。時子の死後、無難に毎年の集いを済ませていた彼女たちに、謎の人物から突きつけられた告発。静かな湖面に投げ入れられた礫のように、その問いかけは彼女たち五人の心中に波紋を広げていく。

目まぐるしく入れ替わる告発者と被告発者。あたかも舞台劇を見ているかのようで、スポットライトがカチャッと切り替わったのが読み手に伝わってくる。一癖もふた癖もあるような個性的な登場人物たちは、それぞれに自分だけの切り札と弱みを持ち、互いの手札を読みあい、心中を探りあう。二泊三日のうぐいす館での出来事を緩急織り交ぜつつ、テンポ良くラストまで緊張感を持続させえたのは見事だと思う。ちゃんとラストにオチもつけてるしね。再読してみて珍しく微妙に評価アップ。

映画版は鈴木京香主演

『木曜組曲』は2002年に映画化されている。監督は篠原哲雄で、脚本は先述の大森寿美男。キャストは以下の通り。浅丘ルリ子が演じることで、時子の存在感がいや増しており、さすがは大女優の貫禄。他のキャストのそれぞれの個性と役柄がマッチしており、わたし的には良い映像化だったと捉えている。

  • 塩谷絵里子:鈴木京香
  • 川渕静子:原田美枝子
  • 林田尚美:富田靖子
  • 杉本つかさ:西田尚美
  • 綾部えい子:加藤登紀子
  • 重松時子:浅丘ルリ子
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  • アーティスト:村山達哉
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