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『月の裏側』恩田陸 謎の連続失踪事件と「戻ってきた」人々


恩田陸によるホラー?作品

2000年刊行作品。幻冬舎発行の小説誌『PONTOON(ポンツーン)』に1998年10月号から1999年10月号にかけて掲載されていた作品を、加筆修正のうえで単行本化したもの。

月の裏側

月の裏側

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幻冬舎文庫版は2002年に刊行されている。解説は作家の山田正紀(やまだまさき)が担当している。

月の裏側 (幻冬舎文庫)

WEB本の雑誌の恩田陸インタビュー記事によると、本作『月の裏側』のオマージュ元は、ジャック・フィニィの『盗まれた街』なので、気になる方はこちらも要チェック!

水郷箭納倉(やなくら)のモデルは、福岡県の柳川市ではないかと思われる。

おススメ度、こんな方におススメ!

じめっとしたこの季節に読むべき作品を探している方。水郷を舞台としたホラー作品を読んでみたい方。柳川が好き!という方。地方都市ならではの独特の空気感を味わってみたい方。ジャック・フィニィの『盗まれた街』がお好きな方におススメ。

あらすじ

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

九州の水郷、箭納倉(やなくら)。むかしながらの掘割が縦横にはりめぐらされたこの街で起った奇妙な連続失踪事件。しかし消えた筈の人々は数日後に皆戻ってくるのだ。一様に失踪中の記憶を失くして。誘拐なのか、それとも洗脳?得体の知れないなにものかに、静かに侵されていく街。残された人々が最後に選んだ道とは。

ここからネタバレ

深まる謎と雰囲気は最高

やはり本作はこの季節に読むのがベストのように思える。じめっとした堀割の街の雰囲気を掴むには最適なのではないだろうか。この話ってストーリー自体はなんとも宙ぶらりんなまま後味悪く終わってしまっているので、恩田陸らしいといえば恩田陸らしい作品。その辺が、好き嫌いが分かれるところだろう。しかし、結局主人公はいったい何者だったのだろうか。

とはいえ、多聞クンの独特の感覚(オセロゲームってなんだか声がしますよねー、『影に逃げられちゃった』話とか)とか、種々の描写の妙(コンビニのアレ、堀割の田螺の卵、水の檻に包まれる寺院、水に侵された図書館のゴムまりのシーン)あたりは、やっぱりいいんだよなあ、恩田陸。このタッチは確かに他の作家にはなかなか真似出来ない境地だと思う。恩田作品ならではの不思議な結界がそこに生じている。

望んでいたようなカタルシスは得られなかったのだけれども、水郷箭納倉の雰囲気は叙情豊かに描かれていて美しかった。あいかわず地方都市の空気を映してくるのが巧いのだ。

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