ネコショカ

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『海を見る人』小林泰三 初のエスエフ短編集


小林泰三の七作目の作品

2002年刊行作品。ハヤカワSFシリーズJコレクションの一冊として登場した。

1997年~2001年にかけて「SFマガジン」誌に掲載されていた五編に、徳間デュアル文庫『少女の空間』収録の「独裁者の掟」、そして書き下ろしの「キャッシュ」を加えた短編作品集である。

表題作の「海を見る人」は1998年のSFマガジン読者賞を受賞している。また本書はベストSF2002で国内部門の第3位にランクインしている。

海を見る人 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

なお、ハヤカワ文庫版は2005年に登場している。 

海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA)

海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA)

  • 作者:小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/05/25
  • メディア: 文庫
 

作者の小林泰三(こばやしやすみ)は1962年生まれ。

1995年に第二回日本ホラー小説短編賞を受賞した『玩具修理者』でデビュー。その後『人獣細工』『密室・殺人』『肉食屋敷』と、日本ホラー小説賞出身者らしく、ホラー系の作品を主として手掛けていた。

そんな小林泰三にとって、本作ははじめてのエスエフ短編集ということになる。その後の小林泰三は、ホラー、エスエフのジャンルばかりでなく、ミステリのジャンルにも進出。幅広いジャンルで才能を発揮している。

あらすじ

少年の日に出会った想い人を待ち続ける老人の姿を描く表題作。長距離宇宙船内に構築された仮想空間で起きた怪事件「キャッシュ」。人格を持つ宇宙探査機の彷徨を描いた「母と子と渦を旋る冒険」。量子テレポート技術により飛躍的発展を遂げた未来の人類。そんな宇宙の片隅で起きたとある事件の顛末を描いた「門」他、計七編を収録した短編集。

グロ系ばかりじゃない小林泰三を本作で初めて知った

当然のことながら、この作家のエスエフ作品を読んだのはこれが初めて(当時)。『玩具修理者』や『人獣細工』のような、ひたすら救いのない暗黒ホラー系の話しか読んでいなかったから、これらのエスエフ作品は非常に新鮮に感じた。

こんないい話も書ける人だったんだな。最初はホントに小林泰三が書いているのかと疑って、作者名を見直したほどである(←失礼)。精緻な科学考証により構築されたセンスオブワンダーな世界と、リリカルなストーリーのアンバランスさが良いのである。最初は伏せられている世界の秘密が、次第に明らかになっていくのはなんとも言えない快感であった。

海を見る人 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

海を見る人 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

  • 作者:小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 単行本