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恒川光太郎『夜市』人界と魔界の端境の物語

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恒川光太郎のデビュー作

2005年刊行。恒川光太郎(つねかわこうたろう)の第一作。表題作の「夜市」は第12回日本ホラー小説大賞受賞作品。本書では、加えて書き下ろしの「風の古道」が追加され、単行本化されている。

夜市

処女作の本作でいきなり第134回直木賞の候補にもなった(実際の受賞作は東野圭吾の『被害者Xの献身』だった)。

文庫版は2008年に角川ホラー文庫から刊行されている。

夜市 (角川ホラー文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)

 

あらすじ

学校蝙蝠が夜市の開催を伝えに来る。そこではどんなものでも手に入れることが出来るのだと云う。高校時代のボーイフレンド裕司に誘われ、いずみは夜市の幻想的な世界へと足を踏み入れる。怖ろしくも哀しい秋の一夜の顛末を綴った表題作をはじめ、人ならぬ者たちの通り道に迷い込んだ少年の日の物語「風の古道」。二編を収録した怪奇短編集。

今回も各エピソードごとにコメント。

夜市

ホラーと呼ぶよりはファンタジー?ファンタジーノベル大賞の受賞作品を読んでいるような気がした。怖いというよりは、哀しさ、寂しさを強く感じる作品。

「夜市」は世界のどこかで開かれている人ならぬものたちの市。そこに迷い込んだ人間は必ず何かを買わなくてはその世界から抜け出すことが出来ない。幼い日に弟と共に夜市に紛れ込んだ裕司は弟を売ることで「野球選手の器」を買う。しかし成長し当時の行いを悔いた彼は弟を取り戻そうとする。

どう考えてもとばっちりのヒロインの運命は。そして裕司は弟を奪還出来るのか。ぼんやりと薄暗い、人界と魔界の端境にのみ存在が許されたトワイライトゾーン。幻想的な夜市の雰囲気は悪くない。が、ホラー小説大賞史上最高傑作なんて書かれているけど、さすがにそれは持ち上げすぎのような気も……。

風の古道

書き下ろしの「風の古道」は人知れず存在する異界の道「古道」へと迷い込んでしまった少年のお話。ロードムービー風。次元の狭間に存在する古道。人界への通路はごく稀にしか現れない。古道で生まれたが故に古道から出ることが出来ない謎の青年レン。古道を行く二人が出会う様々な人々。こちらの方が世界観がきっちり成立していて入りやすいかな。

コミカライズはいろいろ出ているらしい

残念ながらわたしは未読だが、ググった限りでは複数のコミカライズ作品が存在している。

「夜市」は2018年に奈々巻かなこによるコミカライズ版が刊行されている。

夜市 (ボニータ・コミックス)

夜市 (ボニータ・コミックス)

 

 そして 2007年から刊行された『まつろはぬもの』は「風の古道」の世界観をベースに、木根ヲサム自身のアレンジも加えて構成された作品である模様。

 恒川作品の幻想的な世界はビジュアル映えしそうだから、機会があれば是非読んでみようかと考えている。

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