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『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

グイン・サーガ続篇137巻『廃都の女王』猫頭の神アウラ・シャー登場

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スカール、魔都フェラーラへ

2015年刊行。栗本薫亡きあとの、続篇グイン・サーガとしては七冊目。五代グインとしてはこれが四作目にあたる。

廃都の女王―グイン・サーガ〈137〉 (ハヤカワ文庫JA)

あらすじ

大鴉ザザと狼王ウーラにいざなわれ、スカールとスーティは魔都フェラーラを訪れる。しかし、キタイの首都として賑わったこの街に、かつての繁栄の姿はない。ヤンダル配下のキタイ兵たちの侵攻に、次第に追い詰められていくフェラーラの民。義憤にかられたスカールは果敢に立ち向かうのだが……。

この巻で起こること

ヤガ編から分岐したスカールとスーティ一行のフェラーラでのお話。以前だったら、こういう枝エピソードは外伝で処理していたんだと思うのだけど、続篇グインはこういう単発の冒険譚も正伝として拾っていく方針みたいだね。

スカール<ミラルカの琥珀>を手に入れる

滅びの道を往く魔都フェラーラで、スカールは臨終間際の女王リリト・デアに対面。アウラ・シャーの神殿に詣でる許可を得る。女神アウラ・シャーの代理構成体との接触に成功し、いくつかの重要な情報を得る。リリト・デアは自らの死と引き替えに子を残し、フェラーラの残された民を新しい地へと導く。

今回のエピソードで判明した内容はこんな感じ

・女神アウラ・シャーはアウラ・カーを長姉とした五人の暁の姉妹の末妹。鰐神アクメットや、ヤヌス十二神も類似の種族であった。
・女神アウラ・シャーは、猫の頭に乙女の肉体、背に一対の純白の翼を持つ異形の姿を持つ
・本物のアウラ・シャーは年月の経過に耐えられず、別の空間に本体を移して眠っている。スカールが会話をしたのはアウラ・シャーの代理構成体である
・アクメット神と女神アウラ・シャーは星船に乗ってこの地に降り立った。
・その後アクメット神はアーナーダを身代わりとしてこの地を去る。
・それから4000年が経過した。
・女神アウラ・シャーにとってグインは「義兄」である

スカールは、約束された三つの宝石(いし)の一つ、<ミラルカの琥珀>を手に入れる。約束された三つの宝石(いし)とは、ユーライカの瑠璃、オーランディアの碧玉、ミラルカの琥珀のこと。そのうち、ユーライカの瑠璃はグインが既に所持しているわけだが、未だ完全なものではない模様。

アッシャ、自らの罪に向き合う

135巻『紅の凶星』で能力が暴走し、村ひとつ焼き払ってしまったアッシャ。生き残った村人たちに激しく糾弾され、己の能力の罪深さを初めて自覚する巻。正義とは相対的なもので、一つの正義は時として悪にもなる。葛藤の末に、アッシャはそれでも魔導師として生きていくことを決意する。

未熟な精神の中に、巨大な魔導師の才能が眠る少女を、ヴァレリウスがどう彼女を育てていくのかが、これからのポイントになっていくのかもしれないね。

ブラン、ミロクの高僧ソラ・ウィンに出会う

第四章が20頁もない件(笑)。こんなに少ししか出番がないなら、次回に飛ばしてもよかったような気がする。

ヤガの地下迷宮の奥深くで、ブランは即身仏化していながらも、未だ健勝のミロクの高僧ソラ・ウィンに邂逅。オッサン濃度高めなヤガ編の平均年齢が更にアップした瞬間なのであった。

廃都の女王―グイン・サーガ〈137〉 (ハヤカワ文庫JA)

廃都の女王―グイン・サーガ〈137〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

今回は、フェラーラ編160頁、アッシャ編95頁、そしてヤガ編が20頁足らずとバランスが悪すぎた。ヤガ編はムリして書かなくても良かったのではないかと。どうしても四章構成にしたかったのかな。

グイン・サーガ続篇138巻『ケイロンの絆』の感想はこちらから。

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