宇月原晴明の二作目は太閤秀吉と秀次の物語
本作は2002年刊行。第11回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』に続く宇月原晴明(うつきばらはるあき)の二作目である。分量にして約二倍、568ページの圧倒的な長大ボリュームに今回も唸らされるのだ。
新潮文庫版は2005年に登場している。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★★(最大★5つ)
秀吉政権時代を舞台とした歴史小説を読んでみたい方。奇想と外連味に溢れた伝奇小説を読んでみたい方。太閤秀吉と秀次の関係性に焦点を当てた作品を読んでみたい方。山田風太郎や隆慶一郎の作品が好き!同じテイストの作品を探している方。宇月原晴明の作品に興味のある方におススメ!
あらすじ
殺生関白と呼ばれ暴虐の限りを尽くす豊臣秀次。しかし太閤秀吉はいっこうに秀次を罰しようとしない。そして茶会に徳川家康を招いた秀吉は、将来の豊臣家滅亡を懇願する。果たしてその理由は?無数の少女たちを拐かし、イエズス会の破門神父を招き入れ、不可解な儀式に熱中する秀次。聚楽第の地下に隠されている戦慄の秘密とは……。
ここからネタバレ
外連味に溢れた世界観が素晴らしい
宇月原晴明は寡作だけど、ホントに素晴らしい作家である。わたし的には大好物。山田風太郎や隆慶一郎らのような、伝奇小説界の鬼才に迫れるだけのポテンシャルを十分に秘めている。この作家の志向するベクトルは絢爛たる妖かしの世界を描くことにとにかく偏っている。正義のヒーローみたいな存在は微塵も登場しないところが特徴的であると言える
聚楽第の地下で繰り広げらえる禁断の秘儀
聚楽第の地下が錬金術の魔窟になっていて、そこでは禁断の人体錬成が行われている!各地の美少女を狩り集めては部品を蒐集。それによって錬成されるのは信長とお市のアンドロギュノスだという壮絶な突き抜けっぷり。妄想もここまで来れば立派で、伝奇小説好きにはもう堪らん感じなのである。
エロスとバイオレンス、そして見てきたような嘘
伊賀忍者平六、イエズス会神父ガーゴ、矮人曽呂利新左衛門この三人の超人バトルは壮絶に燃えるし、秀吉や家康みたいな功成り名遂げたオッサンたちの秘めたるロマンティシズムがこれまた地味に泣けたりしてソツがない作り込みぶり。適度にまともな史実も織り込んで、見てきたような嘘に、程よいホントっぽさが練り込まれているのもいい匙加減だよね。
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