岡嶋二人往年の名作
1988年作品。最初の単行本は徳間書店から。帯に「1988年最高の誘拐小説」とある。表紙イラストのテイストが時代を感じさせる。
徳間文庫版は1990年に登場。
そして少し時間を置いて再文庫化された。講談社文庫版が2004年に登場している。こちらの解説は西澤保彦。
第十回の吉川英治文学新人賞を受賞した作品。岡嶋二人往年の名作である。
岡嶋二人は井上泉(井上夢人)と徳山諄一の合名ペンネーム。1980年代を代表するミステリ作家の一人(二人だけど)と言っていいだろう。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
誘拐をテーマとしたミステリ作品を読んでみたい方。昭和の時代が舞台の作品を探している方。携帯電話の無い時代に、誘拐事件がどのように行われていたか興味のある方。岡嶋二人もしくは、井上夢人の作品に興味がある方におススメ。
あらすじ
会社社長生駒洋一郎は一人息子の慎悟を誘拐され、なけなしの会社運転資金を脅し取られてしまう。息子は無事に戻ったものの、会社は大手に吸収合併され、生駒は失意のうちに人生を終える。十二年後。成長した慎悟はかつての犯人たちを相手取り、同様の手口での誘拐事件を実行にうつす。最新技術を駆使した、前代未聞の誘拐劇は果たして成功するのか。
ココからネタバレ
80年代のハイテク誘拐劇
この手の話で毎回突っ込んでる気もするけど、やっぱり携帯電話が無い時代の誘拐犯罪にはもの凄い違和感を覚える。本作品ではハイテク(当時)を駆使した誘拐描写がウリ。なにせ、1988年なのでインターネットも普及していなくて、まだパソコン通信の時代なんだよね。ラップトップパソコン、音響カプラ、通信ソフトに、草の根BBS。ああ、なにもかもが懐かしい。今となっては、個々の用語に解説が必要だろうね。
究極の自作自演劇?
誘拐犯自らが、金の受け渡し役として自らを指名するので、究極の次作自演劇が必要。警察や被害者家族が聞いている中で、電話で会話するシーンまであったりして、本来どう考えても無理なところをハイテク装備で乗り切っていく。
でもやっぱりこれ、ちょっと冷静な人がいたら変だと思うような気が……。特にスキーの部分は主人公自身の突っ込みが作中で入ってるけど、瞬時に指示を出すのはどう考えても第三者には無理。警察が疑わないのはいくらなんでもオカシイと思うのだけど、このあたりはご愛嬌かな。
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