山之口洋の第三作
2001年刊行作品。『オルガニスト』で第10回日本ファンタジーノベル大賞の大賞を受賞した山之口洋(やまのぐちよう)の三作目。
単行本のみで文庫化はされていない。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
15世紀のフランスを舞台とした西洋歴史小説を読んでみたい方。詩人フランソワ・ヴィヨンを愛している!もしくはその人となりを知りたい!と思っている方。山之口洋の不遇な(後述)代表作が気になる方におススメ。
あらすじ
15世紀初頭。フランス。ジャンヌ・ダルクが焼かれた年に生まれた私生児フランソワ。彼はサン=ブノア教会の司祭によって育てられパリ大学に入学する。しかし酒と賭博と喧嘩、そして女色で身を持ち崩し、自堕落な日々の果てに殺人の罪まで犯してしまう。官憲から逃れるためにパリを去ったフランソワは盗賊団に身を投じ更なる転落の人生を歩んでゆく。
ここからネタバレ
初期版は自主回収
本作の初期版は、表現に職業差別(屠殺業とかのくだりか?)があったということで発売早々に回収。改訂版に差し替えられているのだが、奥付にそれについての表記はない。なんでも背表紙で見分けがつくらしく、
当時ワタクシが買ったのは、おそらく改訂版のほうだと思うんですけど、背表紙のマークが「6葉」(画像左)から「4葉×4」(画像右)に変わった以外に、改訂版であることを匂わす記述なんて、どこにもありません。奥付の発行日も「2001年2月20日」としか書いていないし。改訂したことぐらい、はっきり書いといてくれれば親切なのに。新潮社のいじわる。
のだそうだ。とするとわたしが読んだのは旧版か。
ちなみに選外ではあるが第125回直木賞の候補作にもなっている。しかし直木賞の候補作にまでなったのに、文庫化されていないのはかなり珍しいケースではないだろうか。初期版の回収騒ぎが災いとなったのであろうか。残念なことである。
ちなみに、この時直木賞を取ったのは藤田宜永の『愛の領分』。
詩人フランソワ・ヴィヨンの生涯
フランス文学史上最高の抒情詩人フランソワ・ヴィヨンの半生を描いた作品。持って生まれた低きに流れる自堕落な性格が災いして、もの凄い勢いで駄目な方へ駄目な方へと身を持ち崩していくフランソワ君。堪え性もないし、正直でも誠実でもない、ろくでもないことばかりしでかすダメ人間だけど、詩人としては超一流(だったらしい)っていうギャップが面白い。
残念ながら、わたしにはまったくこちらの方面には知識が無いのだが、実際のヴィヨンの詩が作中の各所に挿入されていて、とても楽しく読むことが出来た。野卑だけど、不思議な品がある。原詩で読むとまた雰囲気違うんだろうなあ。
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