ネコショカ

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佐藤賢一『赤目のジャック』~フランス中世最大の農民反乱の顛末


単行本から文庫になる際にタイトルが変わっている

1998年刊行。『ジャガーになった男』『傭兵ピエール』に続く佐藤賢一の三作目。

赤目のジャック (集英社文庫)

1997年~1998年にかけて雑誌「鳩よ!」に連載されていた作品が『赤目 ジャックリーの乱』というタイトルでマガジンハウスから刊行されていた。こちらが最初に出た単行本版である。

赤目―ジャックリーの乱

赤目―ジャックリーの乱

 

本書はその文庫版。文庫版の刊行に伴ってタイトル名が『赤目のジャック』に変更されている。

なお、本作では凄惨な暴力描写が終始続くのでグロ注意である。

あらすじ

十四世紀中葉のフランス。いつ果てるとも知れない百年戦争の中でただ踏みつけにされる日々を送っていた農民たちに転機が訪れた。忌まわしき邪眼を持つ男、赤目のジャックが人々を煽動する。「悪いのは領主だ」と。瞬く間に領主の居城を陥落させた農民たちは略奪の限りを繰り広げる。フランス全土を震え上がらせた中世最大の農民反乱、ジャックリーの乱の顛末を描く。

凄惨を極めた「ジャックリーの乱」の一部始終を描く

「ジャックリーの乱」は日本であまり馴染みのない歴史的事件かもしれない。高校で世界史を選択していた方なら記憶の片隅に残っているかな。1358年、フランスに起きた農民反乱だ。当時のフランスは英仏百年戦争の真っただ中ということもあって、初動の鎮圧が遅れ、フランス各地に農民反乱が飛び火した。

「ジャック」とは本来特定の人物を指す言葉ではなく、一揆を擬人化した人物、はたまた年代記作者の勘違いとも言われている。ちなみに山川の世界史用語集では「土百姓」の意であると記されている。元々存在しなかったジャックという人格を作り上げ、独自の視点でこの事件を再構築したのが本作なのである。

メッチャ渋すぎるテーマ設定で、西洋史好きとしたたまらない一作だ。西洋歴史小説の書き手なんて、日本にはそうそういないので、佐藤賢一の存在価値はあまりに大きい。前作の『傭兵ピエール』はド名作(大好きこの話)だっただけに、期待が高まるのである。

短すぎて物足りない……

……であるのだが、いかんせんこの話、あまりに短すぎないだろうか?反乱の顛末をじっくりと読みたいと思っていた読者としては肩すかしを食らわされた感は否めない。佐藤賢一お得意の男女の情念どろどろの相克劇も、ジェットコースター的展開があまりに急すぎてどうもうまく響いてこないのだ。ネタがいいだけに惜しい。

赤目のジャック (集英社文庫)

赤目のジャック (集英社文庫)