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『悪夢制御装置』はライトノベル×ホラーの越境アンソロジー

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スニーカー・ミステリ倶楽部のアンソロジーシリーズ第五弾

 2002年刊行。短命に終わったスニーカー・ミステリ倶楽部だが、ライトノベルユーザに向けのミステリ啓蒙本として、一般作家によるアンソロジー(短編集)を数冊刊行していた。

ラインナップは以下の通り。

名探偵、殺人鬼、密室、アリバイ崩しと、ミステリ界における主要なテーマを網羅してきたわけだが、五冊目でさすがにネタも尽きて来たのか、今度はホラーだろってことで、登場したのが本書である(適当に推測)。ミステリ倶楽部枠なので、相変わらず、スニーカー文庫なのに表紙と口絵以外にはイラストが無い。

今回のラインナップは篠田真由美、岡本賢一、瀬川ことび、乙一の4名である。当時としては乙一目当てで買った人が多いんじゃないかな。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

ライトノベルに寄せたホラー短編を読んでみたい方。ホラー苦手だけどちょっとだけ興味がある方。篠田真由美、岡本賢一、瀬川ことび、乙一いずれかの作家さんのファン、もしくは作品を読んでみたい方におススメ。

内容はこんな感じ

王女ジェルソミーナに何が起こったのか。無人の城で繰り広げられる狂気の宴『ふたり遊び』。闇の中から聞こえる不気味な音の正体は?とらわれた人々の無残な運命を描く『闇の羽音』。ラベンダーの香りと共に現れた美少女の真の姿とは『ラベンダーサマー』。幼き日、無限の恐怖と共に過ごした時間。陰惨な記憶を呼び覚ますあの出来事『階段』。俊英四名の競作ホラーアンソロジー。

ここからネタバレ

では、簡単に各編へのコメントを。

『ふたり遊び』@篠田真由美

服部まゆみの『この光と闇』を読んでさえいなければ、もう少し楽しめたと思うのだが……。オチも『エコエコアザラク』に同じのがあったような。わりかし、すぐに展開が読めてしまうのが残念。

『闇の羽音』@岡本賢一

名作の誉れ高い『鍋が笑う』の作家。こんなところで出会うことになろうとは。リアルに情景を想像すると笑えてしまうのが本作の困った所。

『ラベンダーサマー』@瀬川ことび

角川のホラー小説大賞出身の作家。作中でも書かれているけど、菊池秀行の『インベーダーサマー』のほのかなパロディになっている。かもし出されるおぞましくも美しい夏の情景が素晴らしい。

『階段』@乙一

贔屓目なしにしても一番面白かった。子供の世界は狭くて閉じているから、恐怖や抑圧から逃れる術が無い。幼年期ならではの無限大の絶望を、丁寧な心理描写で最後まで一気に描き切っている。上手い。

角川スニーカー・ミステリ倶楽部作品の感想はこちら

いつの間にか、ミステリ倶楽部刊行作品のレビューを何冊か書いていた。今となっては意外な感じがするけど、米澤穂信の古典部シリーズも、最初はこのレーベルから出ていたのだからビックリである。