ネコショカ

小説以外は別Blogにしました!
新書・実用書感想Blogビズショカ始めました

『失はれる物語』乙一 初期乙一のベストアルバム的な作品集


白乙一の初期代表作を収録

2003年刊行作品。既刊であった『きみにしか聞こえない』『さみしさの周波数』『失踪HOLIDAY』の中から五作品を抜粋、更に書き下ろしを一編(「マリアの指」)を加えて、単行本化したのが本書。

各編の初出は以下の通り。

  • 『きみにしか聞こえない』:「Calling You」「傷」
  • 『さみしさの周波数』:「失はれた物語」(本書収録時に改題)「手を握る泥棒の物語」
  • 『失踪HOLIDAY』:「しあわせは子猫のかたち」

失はれる物語

文庫版は2006年に登場している。文庫化に際して「ボクの賢いパンツくん」「ウソカノ」の二編が追加されている。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

ハートフルで切ない、初期乙一(ただし白い方)作品を読んでみたい方。ちょっと不思議で、ちょっと心が和む、素敵な短編集を読みたいと思っている方。乙一の作品を未体験だけ度、興味がある!という方におススメ。

あらすじ

空想上の携帯電話で出会った二人の物語を描く「Calling You」。交通事故により、全身麻痺となってしまった男の運命「失はれる物語」。他人の受けた傷を自らに写すことが出来る不思議な少年の話「傷」。不可解な死を遂げた女子大生。高校生の僕がたどり着いた意外な真実とは……「マリアの指」他、六編(文庫版は八編)を収録した短編集。

ここからネタバレ

単行本版のデザインが素敵だった

表側は白地に水色の文字でタイトルを表記。水滴を模したビニールコートが各所に散りばめられており、水滴と重なった部分は色を滲ませる加工が施されている。そして裏面はリストの「3つの演奏会用練習曲~『ため息』」の冒頭部分が刷り込まれているのだが、水滴と重なった部分は透けて見えるという念の入った工夫が凝らされている。

旧作を無理矢理まとめてハードカバーで出そうなんていう試みだから、出来るだけ豪華な装丁にしたいという心づもりはあったのだろうけどこれはかなり頑張っている。ファンなら買っとけ的な、豪華愛蔵版としては文句のつけようの無い出来になっている。

『GOTH』と合わせて読みたい

ハートウォーミング寄りの作品を集めた白乙一の作品集。『GOTH』の横に並べると違和感バリバリである。

他の五編は既読なので感想を省略するとして(それぞれの初出記事参照で)、「マリアの指」だけ書いておこう。どういうわけか、この作品だけ系統としては、黒乙一が入った猟奇趣味の作品。最後にスパイスを効かせようとしたのか、それとも『GOTH』から入った非ライトノベルユーザーへの配慮なのか気になるところ。判りやすいオチの話ではありながらも、人間の後ろ暗い情熱への憧憬と嫌悪が渾然一体となっていて、いかにもこの作家らしい作品になっている。

Kindle Unlimited 会員の方は対象作品なのですぐ読めます。

その他の乙一作品の感想はこちらから