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ゴーストハント(悪霊)シリーズ新旧読み比べ(7)『悪霊だってヘイキ!』と『ゴーストハント7』


ゴーストハント(悪霊)シリーズ新旧読み比べ最終回!

長々とお伝えして来た小野不由美のゴーストハント(悪霊)シリーズを、旧作、新作両方読んでレビューする企画も遂にラスト!本日ご紹介するのはシリーズ第七作『悪霊だってヘイキ!(ゴーストハント7)』である。

『悪霊だってヘイキ!』は1992年に講談社X文庫ティーンズハートレーベルから刊行された。ティーンズハート版としては唯一の上下巻構成であった。

『悪霊がいっぱい!?(ゴーストハント1)』『悪霊がホントにいっぱい!(ゴーストハント2)』『悪霊がいっぱいで眠れない(ゴーストハント3)』『悪霊はひとりぼっち(ゴーストハント4)』『悪霊になりたくない!(ゴーストハント5)』『悪霊とよばないで(ゴーストハント6)』に続くシリーズ七作目である。

ティーンズハート版の「悪霊シリーズ」は、小野不由美初のヒット作となり、いなだ詩穂によるコミカライズ版(1998年~2010年)、 J.C.STAFFによるアニメ版(2006年~2007年)まで登場した。

ティーンズハート版には作者的に心残りの部分が多かったようで、2010年代に入って、大幅な加筆修正が施されたメディアファクトリーによる新装版が登場した。その際にシリーズ名は「ゴーストハント」に改められている。また、サブタイトルとして「扉を開けて」が設定された。

ゴーストハント (7) 扉を開けて (幽BOOKS)

ゴーストハント (7) 扉を開けて (幽BOOKS)

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2020年代に入り刊行が始まった角川文庫版は、上記のメディアファクトリー版をベースとした文庫化である。

ゴーストハント7 扉を開けて (角川文庫)

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あらすじ

吉見家の事件を解決した渋谷サイキックリサーチの面々は、ようやく帰途につくことに。しかし道に迷った彼らがたどり着いたのは長野県のダム湖畔。そこでナルは信じられない言葉を告げる。「SPRを閉鎖する」。ナルの真意はどこにあるのか?そして舞い込んできた、廃校の調査。幽霊が出るとされる小学校で、彼らが遭遇したものとはなんだったのか。

廃校舎の怪異ふたたび

本作は二部構成になっている。舞台は長野山中。ダム湖のほとりにある廃校となった古い小学校。幽霊が出ると噂されている、この場所の怪異に迫るのが前半パート。

不気味な古い木造校舎に閉じ込められたSPRの一行。一人づつ消えていくメンバー。入れ替わりに増えていく子どもたち。定番の展開だが、王道パターンであるだけにこれが効くのだ。いきなり登場した子どもたちに、メンバーたちが違和感を抱けないのも怖い。このあたりは読んでいてゾクゾクさせられた。

廃校舎が舞台となるのは第一作の『悪霊がいっぱい!?(ゴーストハント1)』以来のことだ。物語のはじまりと終わりを、同じシチュエーションで設定しているが心憎い。かつてド素人であった麻衣が、しっかり浄霊までこなしている!麻衣が本来持っていた霊能力が遂に開花するのである。その力は仲間たちとの絆が育てたものでもある。

SPRの仲間たちを思いながら、霊たちを説得していくシーンはシリーズ屈指の名シーンと言えるだろう。

ナルの秘密がついに明らかに!

物語の後半では、第一巻から延々と引っ張ってきたナルの謎がついに明らかになる。改めて読むと第一巻の頃から丁寧に伏線を配置してきたことが伺え、小野不由美の構成力に驚かされる。

ナルの本名はオリヴァー・デイヴィスで日系のイギリス人。ナル(Noll)はオリヴァー(Oliver)の愛称で、決して「ナルシストのナルちゃん」のことではない。麻衣の命名が事態をややこしくしていたわけだ。

ナルには双子の兄、ユージーン(ジーン)が居て、彼は日本で事故に遭い殺害されている。ナルが日本にやってきたのはジーンを探すためだったのである。ここに至って、何度も麻衣の夢に登場してきた「優しいナル」がジーンであったことが判明する。これ、ティーンズハート版刊行時に予想出来ていたファンも居たみたいで、読みの鋭さにビックリである。

ジーンの正体が分かったということは、麻衣とジーンの別離を意味している。ジーンの正体を知る前にナルに告白してしまっている点がなんとも切ない。これ言われたナルの方もきついよね。

思うに、最初に出て来た時点で、ジーンがちゃんと麻衣に「僕はナルの双子のお兄さん、ジーンだよ」って説明していたら、こんなに話が難しくならなかったと思うのだけど……。って、それじゃお話にならないか。

別れのない人間関係はないけれど

ナルによるSPR閉鎖宣言は麻衣に衝撃を与える。天涯孤独の中で生きてきた麻衣にとって、SPRのメンバーたちはもはや家族同然の存在になっていたからだ。SPRが無くなれば彼らとの繋がりも絶たれてしまう。麻衣は葛藤しながらも、仲間たちとの絆を再確認し、自らの成長に繋げていく。

別れるのが嫌なら、別れるのは嫌なのだと意思を表明すればいい。それをどう受け止めるかは相手次第。決して人との繋がりを自分から絶とうとしないこと。大切な存在であれば、自分から気持ちを告げること。麻衣は最終的にここまで開き直る。これも麻衣の成長の一端なのであろう。

 

旧版との違いは?

ティーンズハート版との違いだが、細かな修正が多数入ってはいるものの、大きな変更はない。

ティーンズハート版ではナルの正体について、終盤に一気に考察が進められるが、新版の方ではそれよりも前のパートで少しづつ小出しにして考察が進んでいく。

また、最後のナルとリンの送別会だが、ティーンズハート版では呼ばれていなかったタカと千秋先輩が、新版ではちゃんと呼んでもらっている。さすがにこれはあんまりだと思ったのだろうか。

そうそう。もっとも大事な違いを忘れていた。ティーズハート版は全編にわたって、小野不由美による「あとがき」が収録されていたのである。この違いは大きい。ティーンズ向けのレーベルとして、作者の「あとがき」は必須だったのではないかと思われる。

また、ティーンズハート版の『悪霊だってヘイキ!』では、本シリーズを支えた100冊を超える参考文献が一気に紹介されており、これがなかなかに壮観である。膨大な参考文献が、ゴーストハント(悪霊)シリーズのホラーとしてのリアリティを支えていたことがよくわかる。

実はまだ続きがある「ゴーストハント」

ということで綺麗に完結したかに見えた「ゴーストハント」シリーズなのだが、実は他にもエピソードが存在する。1994年に刊行された『悪夢の棲む家 ゴースト・ハント』である。

こちらは諸事情あってか、復刊も新装版も出ておらず、現在は入手困難な状況となっている。幸い、発売当時に購入したものを所有しているので、今後再読して感想を上げる予定。しばしお待ちを!

コミカライズ版は旧版準拠

いなだ詩穂によるマンガ版ではサブタイトルが「忘れられた子どもたち」となっている。概ね、ティーンズハート版に準拠した内容となっている。旧校舎での怪異や、麻衣の浄霊シーンは、とても良く書けているので未読の方は是非チェックしてみて頂きたい。

コミックスでは9巻(2006年刊行)、10巻、11巻(2008年刊行)に該当する。書下ろし作品。

講談社漫画文庫版では第6巻、第7巻に収録されている。

アニメ版は無いけどドラマCDがある

2006年から2007年にかけてアニメ版の『ゴーストハント』が放映されているのだが、この時点で、マンガ版の『悪霊だってヘイキ!(ゴーストハント7)』は描かれておらず、アニメ版のエピソードから漏れている。そのため、アニメ版のラストは非常に中途半端な形になっている。

その代償なのか、『悪霊だってヘイキ!(ゴーストハント7)』のエピソードはドラマCDとなっている。コミックスの11巻、12巻発売時にドラマCD付限定版で手に入れることができた。もちろんアニメ版とキャストは同じ。

現在は入手困難で、わたしも全部はチェックできていない。アンダーグラウンドなものだが、Youtubeに上がっているものがあったので、とりあずリンクだけ貼っておこう。コミック版(文字は英語だが)の絵と合わせたものになっているので、よりわかりやすくなっている。

おまけ:実写映画版の構想があった?

今回のエントリを書くのに、いろいろググっていて発見したのがこちらの記事。

『ゴーストハント』は2014年夏に実写映画化される構想があったらしい。ソースが何故か海外のみで国内情報はなし。監督は山口義高。ナル役に三浦春馬。麻衣役に福沢マヤが想定されていたらしい。お蔵入りしてしまったんだろうか?

この件について、調べた方の記事を発見。

 

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