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ゴーストハント(悪霊)シリーズ新旧読み比べ(6)『悪霊とよばないで』と『ゴーストハント6』


ゴーストハント(悪霊)シリーズ新旧読み比べ六回目!

小野不由美のゴーストハント(悪霊)シリーズを、旧作、新作両方読んでレビューする企画。本日ご紹介するのはシリーズ第六作『悪霊になりたくない!(ゴーストハント6)』である。

『悪霊とよばないで』は1991年に講談社X文庫ティーンズハートレーベルから刊行された。『悪霊がいっぱい!?(ゴーストハント1)』『悪霊がホントにいっぱい!(ゴーストハント2)』『悪霊がいっぱいで眠れない(ゴーストハント3)』『悪霊はひとりぼっち(ゴーストハント4)』『悪霊になりたくない!(ゴーストハント5)』に続くシリーズ六作目である。

「悪霊シリーズ」は、最初は講談社X文庫ティーンズハートレーベルから刊行されていたが、2010年代に「ゴーストハント」とシリーズ名称を変えて、メディアファクトリー版が発売された。この際に、大幅な加筆修正が施されている。サブタイトルは「海からくるもの」。

ゴーストハント (6) 海からくるもの (幽BOOKS)

ゴーストハント (6) 海からくるもの (幽BOOKS)

 

2020年代に入ると、メディアファクトリー版をもとにした角川文庫版の発売が始まる。

ゴーストハント6 海からくるもの (角川文庫)

オーディオブックスタイルのオーディブル版(2021/11/26配信開始予定)は安國愛菜がナレーションを担当している。総再生時間13時間!もあるけど、オーディブル版ならお試し無料(30日間)で聴けるので、興味のある方はどうぞ。

あらすじ

能登半島で高級料亭を営む吉見家。この家では、代替わりの度に怪異が起こり、大量の死者を出してきた。三代目の当主が死亡し、またしても惨劇が繰り返される。事態の解決を依頼された渋谷サイキックリサーチの面々だが、かつてない強力な「何か」の存在に翻弄される。地縛霊に襲われ人事不省に陥ったナル。麻衣たちはナル抜きで、この敵に立ち向かうことが出来るのか。

今回もキャラクターが多い!

吉見家は能登の地で富裕層向けの料亭を営む一族である。三世代13人の大家族になる。数が多いので、まずは彼らの顔ぶれをまとめておこう。

  • 吉見やえ:先代当主の妻
  • 吉見泰造(たいぞう):現当主
  • 吉見裕恵(ひろえ):泰造の妻
  • 吉見和泰(かずやす):長男
  • 吉見靖高(やすたか):次男
  • 吉見光可(てるか):長女
  • 吉見奈央(なお):次女
  • 吉見彰史(あきふみ):三男。東京の大学生。依頼人
  • 吉見陽子(ようこ):和泰の妻
  • 吉見栄次郎(えいじろう):陽子の夫
  • 吉見克己(かつき):和泰と陽子の子
  • 吉見葉月(はづき):和泰と陽子の子
  • 吉見和歌子(わかこ):光可と栄次郎の子

吉見家では代替わりごとに大量の死人が出る。そのための備えなのか、この一族は多産の家系でもある。呪いによって一族の誰かが死んでも、数が多ければ誰かが生き残る。そんな想いが陰に秘められているのかもしれない。

吉見家は死屍累々、数多くの因縁が残る地

続いて、吉見家のこれまでの被害状況をまとめておこう。

  • 先代死亡時(32年前):家族が8人が死亡。客2人。霊能者3人。計13名が死亡。
  • 初代死亡時(68年前):6人死亡(旧版)。14人死亡(新版)。

また、吉見家周辺に存在する曰くありげな物件がこちら

  • 洞窟にあるおこぶ様の洞:漂着した神
  • 雄瘤(おこぶ)と雌瘤(めこぶ):海に身を投げた姫と漁師
  • 岬の突端にある5つの塚:殺された一揆の首謀者を祀ったもの
  • 神社にある十八塚(三六塚):旅の六部を祀ったもの

吉見家周辺恐ろしすぎる!増え続ける被害者。呪いの要素がてんこ盛りになっている中で、果たして事件を解く鍵は何処にあるのか。そしてラスボスは誰なのか?ホラーテイストと、ミステリ的な謎解きの要素が絶妙にブレンドされているのが本作なのである。

ナルがいない!ぼーさん活躍!まさかの綾子回!

これまでの五作では事件解明に向けて、ナルが中心的な役割を果たしてきた。しかしこの作品でのナルは、地縛霊の襲撃を受け憑依され、早々に戦線を離脱してしまう。今回はナルなしで事件を解決しなくてはならないのである。なかなかに新鮮な展開であると言える。

ナル不在にあたって、現場を仕切るのはぼーさんこと、滝川法生(たきがわほうしょう)である。後手後手に回っているきらいはあるものの、しっかり状況を判断をしているし、安原くんを呼んだのも大正解。終盤の攻防戦でもメンバーを守る重要な役割を果たしている。今回の功労者ナンバー2と言っていいだろう。

そして、忘れてはならないのは綾子の存在である。

本気出せば強いじゃん!

これまで役に立ったことがない、なんで居るのか分からない、化粧が濃いだの、さんざん言われてきた松崎綾子(まつざきあやこ)が遂に秘められた能力を発揮するのである。

綾子は樹木の力を借りて法力を発揮することが出来る。但しその力の発現には条件がある。都会ではないしっかりした信仰が残る土地で、相応の樹齢を持つ樹木が周辺にあることが前提とされるようだ。

ナルの能力が明らかに

終盤を除いてほぼ寝ているだけど、今回は散々な状況だったナル。地縛霊から解放されたナルはラスボスである、おこぶさまとの対決を望む。

ここでナルの持つ意外な能力が判明する。神をも吹き飛ばす巨大な力。これは気功?というよりはサイキック(超能力)的なパワーになるのだろうか?リンがナルに常時付き従っているのは、この力の暴走を止めるため。そして暴走後のナルが人事不省に陥ること危惧してのことなのだろう。

プライドを傷つけられたナルは、神であるおこぶさまと戦うことを選ぶ。これは勝てたから結果オーライかもしれないが、負けた場合は麻衣や仲間たち。そして依頼人である吉見家にも被害が及ぶ。ナルが後先を考えられないほど、ブチ切れていたということなのだが、さすがに危ういものを感じた。リンもこういう不安定なところを心配しているんだろうな。

旧版との違いは?

ストーリーの骨子に変更はないが、細かな書き足しが多数入っている。

まず、冒頭。吉見彰史が姪の葉月を連れて事務所を訪れるシーン。戒名の意味をぼーさんが説明するくだりで、葉月に席を外させている。「馬鹿な子供は地獄に落ちるんだ」という読み解きを、葉月に聞かせないための大人の配慮であろう。

「喘月院落獄童女」の喘月は、四字熟語の「呉牛喘月」から。意味は以下の通り。

また、吉見家の歴史が大幅に追加されている。先代、初代、更に本家。金沢時代や飛騨時代のエピソード。本家と分家。先住の藤迫家等。あまりに係累と過去の因縁が多くて、読んでいてくらくらしてきた(系図希望!)。

更に、民俗学的なエピソードも大量に追記されている。海からくるもの。常世信仰と蛭子にまつわる話。能登地域ならではの、立山信仰の要素を取り入れたことで物語の歴史的奥行きがぐっと深まったように思える。ちなみに作中で登場する立山曼荼羅はこんなやつ。

コミカライズ版は旧版準拠

いなだ詩穂によるマンガ版ではサブタイトルが「呪いの家」となっている。

コミックスでは7巻(2003年刊行)と8巻(2006年刊行)に該当する。書下ろし作品。

ゴーストハント(8) (なかよしコミックス)
 
ゴーストハント(9) (なかよしコミックス)
 

 講談社漫画文庫版では第5巻に収録されている。 

ゴーストハント(5) (講談社漫画文庫)

ゴーストハント(5) (講談社漫画文庫)

 

マンガ版は刊行時期的に旧版をベースとした内容になっている。大きな内容の違いは無いが、原作ではナルの事務所でアルバイトをしているタカと千秋先輩が、完全にいなかったことにされている。

また、違いというわけではないが、真砂子の洋服姿をビジュアルで確認できるのはちょっと嬉しい(麻衣の服を借りているのだ)。

アニメ版はコミカライズ版ベース

アニメ版は 2006年から2007年にかけて放映されている。第22話から第25話までが、『ゴーストハント6(悪霊と呼ばないで)』のエピソードになっている。サブタイトルは「呪いの家」であり、マンガ版に準拠している。

内容的にもマンガ版をベースとした内容となっているが、吉見家の最長老、吉見やえの存在が無かったことにされている。さすがに吉見家、人が多すぎると判断されたか。

また、ラスト。ナルの謝罪がメンバー全員がいるところで行われており、個別に謝っていた原作、マンガ版とは描き方が異なる。ナルのプライド的にどうなのかなと思わないでもないけど、迷惑かけたのは全メンバーなのだからアリといえばアリ。

そして尺の問題なのか。最後の麻衣と真砂子のガールズトークがバッサリカットになっている。二人の関係性が改善されてきたことが分かるシーンだっただけに残念。

原作の「ゴーストハント(悪霊シリーズ)」はまだ続くのだが、アニメ版はこの巻で最終となっている。実質的に原作としてきたマンガ版がここまでとなっており、その影響があるのかもしれない。

ゴーストハント FILE8「呪いの家」下巻 [DVD]

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  • 発売日: 2007/11/28
  • メディア: DVD
 

Amazon Primeの方はこちらで視聴可能。

第22話 FILE8 「呪いの家」 #1

第22話 FILE8 「呪いの家」 #1

  • メディア: Prime Video
 

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