ネコショカ

毎日夜20時更新。ネコショカは猫の書架
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魅力的な世界観を持つファンタジー作品、城戸光子『青猫屋』


第八回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞作品

1996年刊行。第八回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品。ちなみにこの年は大賞は該当無し。優秀賞の同時受賞作品が葉月賢の『アイランド』である。

作者の城戸光子は1952年生まれ。受賞時は現役の舞台演出助手。残念ながら2005年に、若くして病没されている。

青猫屋

城戸光子の刊行された作品は本作のみであり、文庫化もされていない。少々不憫な作品である。

あらすじ

すぐれた歌を詠むことが無上の名誉とされるこの町で、人々の生活は数多くの歌に満ちあふれていた。その中にあって、知らぬうちに歌の中に潜む「瘤」を取ることが代々続く青猫屋の当主の裏稼業。それは歌を殺すことを意味していた。早逝した父が残した歌合戦の始末をめぐり四代目青猫屋、廉二郎は奇妙な事件に巻き込まれる。

ファンタジーノベル大賞の懐の深さを

ファンタジーノベル大賞の度量はやたらに広い(たぶん)。エスエフからミステリ、耽美系から冒険小説まで、ファンタジーと銘打つだけの世界がそこに現出してさえいれば、もうそれでオッケー。それは立派なファンタジーなのだ。

浮島。蝙蝠橋。贋稲荷。花折介。ムサ小間。歌仕合。意味不明ながらも、なにやら魅力的な言葉が次から次へと登場する。そして青猫屋という言葉の響きが、これまた実にいい。この青猫屋の一族は歌に巣くう「瘤」を取り、人の心に害をなす歌を殺していくのだという。この設定だけでもう勝ったと思っていい(笑)。

舞台作品を見ているような不思議な感覚

作者が演劇畑の人間だからなのかもしれないが、芝居、それも小劇場系の芝居を見ているかのような印象を強く受けるのだ。頻繁に繰り返される舞台転換。光と陰の織りなすコントラストが美しい。この辺りはとても演劇的な見せ方だと思う。

多種多様な怪異が現れるのだが、くだくだしい説明は一切無し、読み手を突き放すかのように一気にカタストロフィへと雪崩れ込んでいく。結局この騒ぎは何だったのか、何がなんだかまるで訳が解らないまま物語の幕は下りるのだが、不思議と不快感は無い。これはなかなか得難いタイプの作品なのではないだろうか。本作のみで、その後作品が刊行されなかったことが惜しまれる。

なお、城戸光子の未発表原稿が以下のサイトに遺されているので興味のある方は、チェックしてみると良いかと。

www.applepie.gr.jp

青猫屋

青猫屋