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津原泰水『蘆屋家の崩壊』民俗ネタをふんだんに盛り込んだ和ホラー

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時事的な流れに思いっきり便乗している気もするが、せっかくなので津原泰水作品はメチャ面白いよ!ということをわたしもアピールしておこう。

なお、津原泰水のTwitterアカウントは一時期フォローしていたものの、めんどうくさそうなキャラクターだったので今はフォローしていない(すまん)。しかしその作品はいずれもピカイチの良作揃いであることは保障する。

ということで、本日紹介するのはこちら!

津原泰水名義の最初期作品

1999年刊行。その後『ピカルディの薔薇』『猫ノ眼時計』と続いていく、幽明志怪シリーズの一作目である。

蘆屋家の崩壊

集英社文庫版は2002年に登場。

蘆屋家の崩壊 (集英社文庫)

蘆屋家の崩壊 (集英社文庫)

 

その後、本シリーズの刊行が『猫ノ眼時計』以降、筑摩書房に移ったこともあり、ちくま文庫版が2012年に登場している。 

蘆屋家の崩壊 (ちくま文庫)

蘆屋家の崩壊 (ちくま文庫)

 

あらすじ

大学時代の同級生泰有離子の家を訪れたおれと伯爵。十年ぶりの再会は思わぬ事件を引き起こして……。中世の陰陽師蘆屋道満から続く旧家蘆屋家の崩壊を描いた表題作をはじめ、ふとしたきっかで出会った女に追い回される恐怖「猫背の女」、不幸ばかりが続く群馬の寒村にまつわる因縁話「ケルベロス」、計七編を収録した怪奇短編集。

津原泰水プロフィール

津原泰水は元「津原やすみ」。1964年生まれ。

講談社X文庫ティーンズハートで30冊程度の著作がある。元は少女小説家としてスタート。1989年の『星からきたボーイフレンド』がデビュー作である。

星からきたボーイフレンド あたしのエイリアン (講談社X文庫―ティーンズハート)

星からきたボーイフレンド あたしのエイリアン (講談社X文庫―ティーンズハート)

 

21世紀に入るまでずっと女性だと思っていたけど、男性だった。作品を読んだら一目瞭然なのだが、十年近く勘違いをしていた。恥ずかしい話である。

1996年に少女小説の執筆からは手を引いており、津原泰水名義では1997年の『妖都』が最初の作品となっている。以後は主にミステリ、ホラー、他さまざまな小説分野で活躍中。

 

『アッシャー家の崩壊』⇒『蘆屋家の崩壊』

表題作は言うまでもなく、ポオの『アッシャー家の崩壊』が元ネタ。『蘆屋家の崩壊』のタイトルセンスが自分好みで、本作が出た時には即買いであった。

アッシャー家の崩壊/黄金虫 (光文社古典新訳文庫)

アッシャー家の崩壊/黄金虫 (光文社古典新訳文庫)

 

本作は30歳を過ぎて定職につかずぶらぶらしている猿渡(作者がモチーフなのかな?)と、怪奇小説作家の通称伯爵(同じく怪奇作家の井上雅彦がモデルか?)の二人が体験する不思議な出来事を綴ったホラー短編集となっている。

民俗ネタ、和テイストのホラー

結論から言うと、なんでもっと早く読まなかったんだろうと大後悔。民俗要素を盛り込んだ和テイストのホラー群はいずれも趣向を凝らした力作揃いで、貪るように最後まで読み終えてしまった。陰のあるヒロインたち、読み手の五感を喚起してやまない湿り気たっぷりの文章、自虐混じりの主人公の語り口も悪くない。

ちなみに脳内補完イメージは冬目景でずっと読んでいた。これ彼女の絵で漫画化したらイケるような気がする(まあ、無理だろうけど)。

津原作品はこちらもおススメ!

といっても、当ブログではまだ一作しか津原作品を紹介していないのだが、こちらの『ブラバン』も間違いなく名作。音楽系の部活出身者だったら刺さりまくりの一作である。

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