神原恵弥シリーズの第二作
双葉社の小説誌「小説推理」に、2002年7月号、9月号、11月号、2003年1月号、5月号、7月号に連載された作品を加筆修正の上、単行本化したもの。神原恵弥(かんばらめぐみ)シリーズの第二作となる。
単行本版の装丁は表紙を透明にしてしまった『MAZE』程は凝っていないが、ある程度それを意識した造りになっていて、同系統のデザインで暖色系の配色となっている。
双葉文庫版は2006年に刊行されている。解説は三浦しをんが担当している。
2015年に双葉社から、新装文庫版が刊行されている。これは2015年に刊行された、神原恵弥シリーズの第三作『ブラック・ベルベット』の発売に合わせたものと思われる。旧シリーズで文庫を揃えていた身としては複雑な気持ちに……。
神原恵弥が登場する作品のラインナップは以下の通り。
- MAZE[メイズ](2001年)
- クレオパトラの夢(2003年)
- ブラック・ベルベット(2015年)
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
北海道、特に函館や札幌の街がお好きな方。冬の北海道を舞台としたミステリ作品を読んでみたい方。神原恵弥が登場する『MAZE』を読んでいて、その後が気になっていた方。恩田陸が描く、旅情豊かな小説作品を堪能したい方におススメ。
あらすじ
北の街、H市を訪れた神原恵弥。不倫の果てに東京を去った、双子の妹、和見を連れ戻すことが目的だった。しかし到着早々、和見の不倫相手の大学教授は、既に死亡していることが判明する。それは事故なのか、殺人なのか。謎の組織による追跡。失踪した和見。そして恵弥の真の目的、クレオパトラとは何なのか。
ここからネタバレ
冬の北海道を舞台としたミステリ作品
恩田陸が描くところの、旅情サスペンスシリーズの北海道編である。H市(函館)と札幌が舞台。冬の街を舞台に繰り広げられるスパイアクション。『MAZE』の内容を半分忘れていた自分としては、神原恵弥がそういうキャラであるということをすっかり忘れていたがために、途中まで作品の性質が把握出来なかった。防衛庁が出てくるに至って、ああ、そういう話なのかとようやく得心しつつも激しくずっこけた。なんだか似合わないなあ。
凍てつく北の夜。静まりかえった街。旅情豊かに描かれる函館の情景は関東人としてはいたく刺激される部分。茫漠とした北の大地の描写は、兄妹でありながら、いつしか遠い関係になってしまった恵弥と和見の姿を想起させられる。作品内容に合わせて舞台を選んでいるのか、舞台に合わせて作品内容を合わせているのかわからんけど、いつもながら上手い。やっぱり北海道は冬に行かなきゃダメだなと思った。
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