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『水滸伝19 旌旗の章』北方謙三版「水滸伝」遂に完結!

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北方謙三版「水滸伝」最終巻!

三月からかれこれ四か月、延々と毎週月曜日にお届けしてきた北方謙三版「水滸伝」の連続感想企画も遂に最終十九巻「旌旗(せいき)の章」に到達である(長かった)。

単行本版は2005年の刊行。

水滸伝 19 旌旗の章

水滸伝 19 旌旗の章

  • 作者:北方 謙三
  • 発売日: 2005/10/26
  • メディア: 単行本
 

集英社文庫版は2008年に登場している。

水滸伝 19 旌旗の章 (集英社文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★★(最大★5つ)

ここまで来たら最後まで読むしかない!という方、英傑たちの姿を最期まで見届けたい方、想像を超えたラストに衝撃を受けたい方、何が起こっても動じない強いメンタルをもって臨める方(笑)におススメ!

あらすじ

童貫率いる官軍との決戦の時が訪れようとしていた。圧倒的な物量。鍛えられた精兵。卓越した指揮能力。死角の無い童貫軍に梁山泊軍は総力を挙げて立ち向かう。奮戦も報われず、次々と斃れていく好漢たち。乾坤一擲の反撃は実を結ぶのか。死闘の果てに残された者たちが見たものは。北方版水滸伝、遂に完結!

ここからネタバレ

想像以上のバッドエンド!

 

いや、しかし驚いた。もともとの『水滸伝』とは当然違うラストになる予想はしていたけど、ここまで無残な結末が用意されていようとは。衝撃的な幕切れである。

『銀河英雄伝説』みたいに、戦術的には勝利するけど、戦略的には負け、みたいな落としどころを想像してたのでビックリ。

数多くの武将を死なせ、それと引き替えに童貫の首を取る梁山泊。しかしその時、高キュウの手筈で帝の勅使が和睦の申し入れを行い、呉用先生がホイホイとそれを受けてしまう。みたいな、オチかなと思ってたのに……。

最終局面で痛恨のミス

まさかフツウに戦術面の戦いで読み負けるとは。

事ここにいたって、呉用先生は軍師の役割を放棄し、現場の武将たちに任せることに。やっぱり、この集団合議制が敗因かな。やはり誰かが腹をくくって決めてあげないと。秦明なり、呼延灼なり、戦闘面での最高責任者を明確に規定しなかった梁山泊の負けなのだと思われる。

圧倒的な大軍を擁しながらも、自身で最前線に立って何度となく突撃をしかけてくれる童貫。史進や楊令の最精鋭部隊をぶつけても勝てないんだから、こうなると厳しい。ここで呼延灼が判断を誤るのが痛恨の極み。史実の童貫はもう少し長生きする(童貫は実在した人物)ので、もうしばらくは死なないみたい。続編のラスボスかしらん。

官軍が強すぎる!

これまで何度も書いてきたけど、北方「水滸伝」の特徴として、フツウに官軍が強いんだよね。苦しい台所事情ながらも補給をやりくりして、大軍を繰り出してくる。パーツ単位での官僚や軍人、そして帝そのものがダメ人間でも、国家としての宋はまだまだ衰えてないんだよね。腐りかけてるけど、完全に腐りきるところまでは行ってない。

となると、梁山泊の存在意義がなんとも難しい位置づけになってくる。梁山泊の叛乱が合ったが故に、宋の国力が落ち、それを金に付けこまれて亡国の遠因になっちゃいました。なんて皮肉な結果もあり得そう。

余談ながら、青蓮寺を掌握した後の、李富の長いものに巻かれろっぷりが酷い。なんという堕落。ダメだろこいつ。聞煥章のおもねり具合も萎えたな。 

水滸伝 19 旌旗の章 (集英社文庫)

水滸伝 19 旌旗の章 (集英社文庫)

  • 作者:北方 謙三
  • 発売日: 2008/04/18
  • メディア: 文庫
 

続きは「楊令伝」で!

なお、内容的にはちっとも終わってない北方版「水滸伝」だが、当然続篇が書かれている。その名も「楊令伝」である。これまで地道に楊令の成長を描いてきたのは次シリーズの主役を張らせるためだったのである。

この状況で、どうやって続編のオチをつけるのか?とても気になるところだが、「楊令伝」の感想はまたしばらく時期を開けてからお届けする予定。しばしお待ちを。

楊令伝 一 玄旗の章 (集英社文庫)

楊令伝 一 玄旗の章 (集英社文庫)

  • 作者:北方謙三
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: Kindle版
 

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