「銀盤カレイドスコープ」シリーズの七作目
2006年刊行作品。熱血フィギュアスケート小説の第七巻。
刊行当時、世の中的にはトリノが終わったばかりなのだが、「銀盤カレイドスコープ」の世界では早くも2009年。前巻のあとがきでは次のバンクーバー編で最後と書かれていたけれど、さすがに一冊では収まらなかったらしい。今回のVol.7はバンクーバー五輪編のプロローグとも取れる内容になっている。
特筆事項としては、久々に一人称視点がタズサに戻ってきた。
そして、やはり最終決戦の前には特訓。スポ根モノの基本に忠実な展開と言えるだろう。
あらすじ
2009年。ロシア。翌年にバンクーバー五輪を控えた大事な時期に桜野タズサはコーチを変えた。新しいコーチは女帝リア・ガーネットを育てあげたマイヤ・キーフラ。かつて無い過酷なトレーニングに耐えるタズサ。圧倒的な力で世界に君臨する女王への挑戦権を賭けて、女たちの意地とプライドは静かに燃え上がろうとしていた。
博愛主義者ガブリー
リアに継ぐ実力者でありながらこれまで出番の少なかったガブリーちゃんに初めてスポットが当たる。究極の自己中女タズサとは正反対に、国のため、ファンのため、そして自分のために滑る博愛主義のガブリー。世界のNo2とNo3を担う対照的な二人が良く書けている。終盤のタズサとの会話シーンは本編の白眉とも言える名場面。静かな決意が熱い。
女帝リアの本格的出番は次巻?
リアの出番も当然あることはある。でも依然として謎キャラ扱い。この子の内面が描かれることは無いのだろうか。ひょっとしたら笑いを取るために入れているのかもしれないけど、贅を尽くしたお泊まりシーンの描写はちょっとやりすぎで興醒め。このシリーズに百合的な展開をあまり求めていないのだけど……。
最終章への打ち上げ花火
今回はプロローグってことで、結局最後までまともなスケート描写は無し。このまま大人しく終わるのかと思わせておいて最後の最後でドカーンと強烈な打ち上げ花火。スケートシーン無しでここまで盛り上げるとはさすが。タズサはやっぱりこうでないと。いい感じの引きで次回へ続く。あと一冊で終われるかな。
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