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『銀盤カレイドスコープ Vol.9 シンデレラ・プログラム』海原零 圧巻の最終滑走


「銀盤カレイドスコープ」最終巻

2006年刊行。遂に最終巻である。Vol.8との同時発売。バンクーバー五輪フリープログラム+α編。

銀盤カレイドスコープ vol.9 シンデレラ・プログラム:Say it ain’t so (集英社スーパーダッシュ文庫)

最後だからということもあるのだろうけど、脇役の至藤、ドミニク、ステイシー、キャンドルにもちゃんと感動的な見せ場が用意されている。いい物語は、いい脇役あってこそ。悲運のスケーター至藤響子27歳での初五輪は泣けたよ。

あらすじ

バンクーバー五輪開幕。かつてないプレッシャーの中、ショートプログラムの演技を終えたタズサ。リアを射程圏内に捉えての二位。フリーの滑走順は不運にもタズサの直前にリアが滑ることになる。これまで頑なに秘されてきた女帝リアのフリー演技。その全貌が明らかになったとき、世界は戦慄する。次々に繰り出される神技の連続にタズサはただ立ちつくすしかなかった。

フィギュアスケートの演技描写熱い

前巻でショートプログラムの演技までが終わっていて、本巻はフリープログラムの演技から。おお、そうきますかという劇的過ぎる展開。残りのページ数見て、もしやと思ったけどそこまでやるか。タズサのビビリ具合もさることながら、コーチのマイヤが同じように動転しまくっているのがいい演出。

近年見る機会が増えてきたとはいえ、素人の読者相手にフィギュアスケートの滑りの凄さを納得させてしまうハッタリ力はたいしたものだと思う。フィギュアシーンの描写も相変わらず力が入っている。

バンクーバー五輪編のその先がある

リアの神演技に完膚無きまでに敗北したタズサは落ちるところまで落ちてしまう。マイヤの気遣いも、子供達の励ましも、キャンドルの挑発も全て不発。そしてもうピートは側に居ない。悶々とした鬱展開が200頁弱続く。350頁弱しかないVol.9の半分以上はこのどん底モードなのだ。あのタズサがである。これは最後に更なる高みに跳ぶために必要な助走期間なわけだけど、やっぱり計算して書いているんだろうなあ。これがラストバトルで効いてくる。

第三のヒロインが輝く

そしてガブリーちゃんだ、ガブリーちゃん。萎え気味のタズサの気持ちに活を入れる。誰もが諦めた神への挑戦を全然諦めていない!鬼気迫る血染めの聖女。読み手のテンションも一気にアップ。熱血スポ根小説とはこうでなくてはなるまいよ。最終エピソードがVol.7からの三巻セットだったということをこれでようやく理解出来た。デフォルトが常に前向きで全力投球。タズサとは対照的な彼女の存在はこの物語を締めくくるのに絶対に必要な要素だったわけだ。このあたりから目から水が……。

赤い靴とガラスの靴

赤い靴を履いたリアと、ガラスの靴を履いたタズサ(Vol.8の表紙には赤い靴、今回のVol.9には赤い靴がきちんと描かれている)。ここいら辺もそれぞれの運命を暗示させたナイスな仕掛けだった。

これからはリアとタズサの二強時代に入っていくのだろうか。全てを投げ打ってようやくたどり着けた神の領域。一度勝ったからといって、才能で劣るタズサがこれからも勝てる保証は無い。この先の物語も読んでみたい気はするけど、ここで終わっておくのが一番美しいのだろう。

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