『白銀の墟 玄の月』関連の各社報道をまとめてみた
『白銀の墟 玄の月』以前から、既に大ヒット作であった「十二国記」シリーズだが、それはあくまでも読書人の間にだけで、一般層への認知はいま一つだったのではないだろうか。今回の『白銀の墟 玄の月』は全四巻で240万部を超えた。2019年を代表する小説作品となったことで、その知名度は更に高まったはずである。
ということで、小野不由美による「十二国記」シリーズ、18年ぶりの新作長編『白銀の墟 玄の月』について、発売前からの版元の情報開示、発売直前直後の盛り上がり、発売後の大手紙面でのレビューについてリンクをまとめてみた。
各社の報道記事から、その浸透の過程を時系列に沿って読み取っていきたい。
- 『白銀の墟 玄の月』関連の各社報道をまとめてみた
- 公式サイト『麒麟便り』での第一報から発売直前まで
- 発売直前、第1巻の初版部数は「新潮文庫史上最高」50万部!
- 大ヒット後の各紙紹介記事は?
- おわりに
- 小野不由美作品の感想はこちらから!
公式サイト『麒麟便り』での第一報から発売直前まで
2018/12/12
新潮社の「十二国記」公式サイト『麒麟便り』にて、待望の新作が遂に刊行されることが発表される。ちなみに12月12日は『「十二国記」の日』である。
これを受けて、ウェブ系の各メディアにて新作登場の報が流れ始める。この時点では、公式発表をなぞった程度の内容で、大手新聞社などでの取り扱いは無かった。
- 『十二国記』新作、2019年刊行へ 新潮社が「十二国記の日」に発表 - ねとらぼ
- ファンタジー小説の巨編「十二国記」新作は戴国を舞台にした物語で2019年刊行 - GIGAZINE
- 小野不由美「十二国記」シリーズ新作が2019年に刊行! 「平成のうちに新刊情報が聞けて嬉しい」とファン歓喜 | ニュース | Book Bang -ブックバン-
2018/12/28
『麒麟便り』にて正式に発売日が公表された。
全四巻で、10月、11月二ヶ月連続刊行となります。
一、二巻が10月12日(土)、
三、四巻が11月9日(土)発売です!
2018/7/19
新潮社の電子版小説誌「yom yom vol.57」では記念プレ特集を掲載。冲方丁、阿部智里、小松エメル、鈴村健一らのメッセージが寄せられた。
2019/7/23
プロモーション動画が公開。ナレーションはアニメ版「十二国記」で楽俊役を務めた鈴村健一が担当している。
2019/8/1
新作のタイトル『白銀の墟 玄の月(しろがねのおか くろのつき)』が遂に発表される。
2019/9/2
続いて、第一巻と第二巻の書影が公開された。
2018/9/20
新潮社の電子版小説誌「yom yom vol.58」では記念プレ特集の二回目を掲載。畠中恵、芦沢央、三川みり、川谷康久らのメッセージが寄せられた。
2019/9/25
「週刊新潮」に大森望による「特別読物『十二国記』の楽しみ方」が掲載される。
この記事はその後ウェブに転載される。「十二国記」の一般層向け事前レクチャーとして機能することになる。
- 18年ぶり新作長編『十二国記』の楽しみ方【前編・これから読む人のための徹底ガイド】(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
- 18年ぶり新作長編『十二国記』の楽しみ方【後編・全10タイトル、どこから読むか?】(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
2019/9/27
紀伊國屋書店の新宿本店にて特別展示〈「十二国記」の世界〉がスタート。このあたりまでは、新潮社による自社プロモであると言える。
発売直前、第1巻の初版部数は「新潮文庫史上最高」50万部!
2019/10/3~4
Twitterにて「十二国記」関連のツィートが相次いでバズり、その注目度の高さが広まっていく。
職場の人から「『12個クッキー』って小説がすごく売れてるらしいけど知ってる?」と聞かれ、知らないなあと思ってよく聞いたら十二国記のことだった。
— ヒロポン (@hiropon03) October 3, 2019
十二国記有休とろうと、取得理由に読みたい本があるためと記入して申請した。
— コモ (@komota_369) October 4, 2019
労務「十二国記?」
私「なんで分かったんです?」
労務「コモさんで3人目なんだよね。それそんなに面白いの?」
私「面白いです…というか誰です残りの2人!?」
労務「個人情報は言えないよ」
そこまで話しておいて!
また、「ダ・ヴィンチ」2019年11月号では「十二国記」の特集が組まれている。
2019/10/9
10/12の発売を目前に控え、J-CASTニュースにこちらの記事が掲載される。新作発売を台風19号の直撃に例える、いささか不謹慎な取り上げ方だが、ファンの期待の高さがうかがえる。
2019/10/10
更に、大森望による直前の盛り上げ記事も掲載。
2019/10/11
そして、発売日直前に至り、第一巻の初版部数が新潮文庫史上最高の50万部を超えるとてつもない数字になっていることが、新潮社による公式リリースで明らかになる。
これに伴い、「十二国記」全体の累計刊行部数も1,000万部を超えている(講談社X文庫ホワイトハート、講談社文庫分含む)
2019/10/12
『白銀の墟 玄の月』1巻、2巻の発売日当日、東京メトロ新宿駅には柱巻広告が掲出された。また、朝日、読売の両紙には新聞広告も掲出。
ウェブメディアにも記事掲載。
これに合わせて、プロモーションビデオの第二弾も公開。
Twitterでは当然のことながらトレンドに入った。
大ヒット後の各紙紹介記事は?
2019/10/15
honto総合ストアランキングにて第1位獲得!
2019/10/17
発売初週のファンのツィートをまとめたもの。「十二国記」愛に溢れていて感慨深い。
2019/10/22
日経の記事。大手紙でも取り上げられ始める。
このあたりからようやくレビュー記事が出始める。
2019/10/25
こちらは文芸評論家、細谷正充の評。
物語の起点が園糸であることに触れ、
なぜ彼女の視点で、本書が始まるのか。歴史と人間に対する作者の、たしかな認識があるからだ。歴史書に載るのは、時代を動かした人である。だが、その陰には時代の流れに翻弄される、無数の民がいる。彼らの悲劇や慟哭は、後の世に伝わらないだろう。それでも間違いなく、この世界に存在していたのだ。このような民を、作者は忘れることはない。なぜなら世界を構築するのは、そこに生きるすべての命ある者であるからだ。
と読み解く。園糸親子には幸せになって欲しい。。
2019/10/28
新潮社の読書情報誌「波」に 小野不由美インタビューが掲載。
2019/11/3
経済思想家・経営コンサルタントである倉本圭造によるレビュー。
「十二国記」シリーズ特有の、「女性ならではの視点」に着目し、その考え方は現代社会にも敷衍できるのでは?と考察している。
2019/11/5
日経。1~4巻までの発行部数が全て55万部以上となったことが判明。四冊合計で241万部の快挙に。
第1巻初版は「新潮文庫史上最高」の50万部で、10月12日の発売から3日で約半分を売り上げ重版が即決定した。3、4巻(11月9日発売)も「事前重版」。1~4巻いずれも55万部以上、計241万部に上り、異例づくしの売り上げに新潮社の担当者も「想像以上だ」と驚く。
2019/11/6
現役の書店員が大ヒットとなった理由を考察。ライトノベル時代から、アニメ化を経て次第に受容層が広がっていった経緯を紹介している。
2019/11/9
『白銀の墟 玄の月』3巻、4巻が発売。
2019/11/16
朝日新聞。前島賢(作家名:大樹連司)によるレビュー。(有料記事)
こちらで全文が公開されている。ありがたい。
2019/11/20
産経の記事。「十二国記」という用語を含むTwitterのツィート統計をグラフで公開。今回初めて「十二国記」に触れた記者の視点からの紹介記事。一般の方の目線がなんだか新鮮。
2019/11/21
朝日の紹介記事。大ヒットとなった原因を探る。(有料記事)
2019/11/27
書評家・ライターのタニグリリウイチによる「十二国記」評。ライノベルレーベルから、一般向けレーベルへ。そして講談社から新潮社へと版元が変った経緯を読み解く。
2019/12/4
「十二国記」がYahoo!検索大賞2019の〈カルチャーカテゴリー 小説部門賞〉を受賞
2019/12/8
辻村深月へのインタビュー記事だが、一部「十二国記」に触れている部分がある。
最初に『十二国記』を読んだ10代の頃の自分を巡る状況や気持ちも一緒に蘇ってきて、時間を超えて好きでいつづけることができる作品があるということの幸せを堪能しました。著者の小野不由美さんにも改めて感謝を覚えます。
2019/12/10
ジャーナリスト白河桃子による「十二国記」評。白河桃子が「十二国記」を読むなんて!と内容が気になるが(有料記事)なのであった。
2019/12/12
新作の発表から一年を経過。『「十二国記」の日』に大ヒット御礼の4種の全面広告が掲載。
2020/01/21
ライターであり、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』の著者でもある三宅香帆による考察記事。「私の居場所はどこにあるの?」という視点から、「十二国記」シリーズを紹介している。
2020/01/21
SankeiBiz(サンケイビズ)による「昨年(2019年)ツィッターでつぶやかれた本ランキング」が発表された。集計ルールは以下の通り。
集計方法 昨年2月から収集を開始した「読了」「読んでみた」などのフレーズを含む、読書感想とおぼしきツイート約250万件に含まれていたコミックを除く書籍名をタイトルごとにカウント。4巻セットの『白銀の墟 玄の月』と上・下巻セットで文庫化された『蜜蜂と遠雷』は、発売日以降のツイート件数を巻数で割った。
単著での集計となったため4冊もあった『白銀の墟 玄の月』は選外となり、1位はなんと『魔性の子』に!新刊発売に伴い、旧作の読み返しを行った読者が多かったのではないかとという推察。
『魔性の子』は特に『白銀の墟 玄の月』に直結するエピソードだけに言及される機会も多かったのであろう。
2020/03/02
第5回吉川英治文庫賞を「十二国記」シリーズが受賞したことに伴う新潮社のリリース。優れた大衆作品のシリーズ作に与えられる賞で、今年で五回目。
実績的には受賞して文句なしと思われる本シリーズだが、久しぶりに続巻の『白銀の墟 玄の月』が刊行されたことが後押ししたのではないだろうか。
2020/05/28
2020年の上半期「文庫 作家別ランキング」で小野不由美が第一位に!上半期中での推定売上部数1,020,373とのこと。
2020/06/02
新潮社のリリース記事。『白銀の墟 玄の月』四冊での累計販売部数が250万部を突破。「十二国記」シリーズ全体の販売部数も1,200万部を超えたことが公表された(講談社時代の旧版分を含む)。
2020/12/03
『ダ・ヴィンチ』2021年1月号発表、「BOOK OF THE YEAR 2020」にて、『白銀の墟 玄の月』が小説部門第1位に!本誌には小野不由美の受賞インタビュー記事も掲載。
おわりに
ということで、主要紙を中心に「十二国記」最新刊『白銀の墟 玄の月』について、版元である新潮社の対応や、発売後どのような報道がなされてきたかをまとめてみた。
まだまだ、全ての記事を確認できたわけではないので(特に地方紙)、他にもこんな記事があったよ!など、あったらお知らせ頂けると助かります。
小野不由美作品の感想はこちらから!
〇十二国記シリーズ
『魔性の子』 / 『月の影 影の海』 / 『風の海 迷宮の岸』 / 『東の海神 西の滄海』 / 『風の万里 黎明の空』 / 『図南の翼』 / 『黄昏の岸 暁の天』 / 『華胥の幽夢』 / 『丕緒の鳥』 / 『白銀の墟 玄の月』
「十二国記」最新刊『白銀の墟 玄の月』を報道はどう伝えたか / 『「十二国記」30周年記念ガイドブック』
〇ゴーストハント(悪霊)シリーズ
『ゴーストハント1 旧校舎怪談(悪霊がいっぱい!?)』 / 『ゴーストハント2 人形の檻(悪霊がホントにいっぱい!)』 / 『ゴーストハント3 乙女ノ祈リ(悪霊がいっぱいで眠れない)』 / 『ゴーストハント4 死霊遊戯(悪霊はひとりぼっち)』 / 『ゴーストハント5 鮮血の迷宮(悪霊になりたくない!)』 / 『ゴーストハント6 海からくるもの(悪霊と呼ばないで)』 / 『ゴーストハント7 扉を開けて(悪霊だってヘイキ!)』 / 『ゴーストハント読本』
〇その他
『悪霊なんかこわくない』 / 『くらのかみ』 / 『黒祠の島』 / 『残穢』