座間味くんシリーズの第二作
2007年刊行作品。光文社のカッパ・ノベルスからの登場。2004年から2007年にかけて小説誌「小説宝石」に掲載されていた諸作品群をまとめたもの。『月の扉』で登場した座間味(ざまみ)くんを主人公とした連作短編集となっている。
光文社文庫版は2009年に刊行されている。
座間味くんシリーズはこの後、2012年の『玩具店の英雄』、2016年の『パレードの明暗』と続くが、いずれも短編集となっている。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
座間味くんシリーズの一作目『月の扉』を読んで、その後の話も読みたいと思った方(『月の扉』を読んでいなくてもオッケーだけど、出来ればそちらを先に読みたい)。
本格ミステリも社会派ミステリも好き!という方におススメ。
あらすじ
新興宗教の教祖の死体からえぐり取られた心臓と、もぎ取られた左腕。その思わぬ真相を綴る表題作をはじめ、過激派組織で起きた密室殺人の謎「貧者の軍隊」、内ゲバの果てにたどり着いた凄惨な殺人劇「罠の名前」、急進的な環境保護団体が起こした殺人事件の奇妙な動機「水際で防ぐ」、他。計七編を収録したミステリ短編集。
ココからネタバレ
今回の座間味くんは連作短編集だ!
『月の扉』の一件で座間味くんと知己を得た警視庁の大迫警視が東京で彼と再会。酒のツマミにとばかりに、既に終わった事件の顛末を話して聞かせ、それに対して座間味クンが事件の意外な裏側を指摘して見せる構造を取る。いわば安楽椅子探偵モノのバリエーションの一つだ。
石持浅海は本格ミステリの作家でありながら、「社会派」の特性も多分に併せ持っていて犯人はテロリスト、環境NPO、新興宗教団体、極左組織と、やたらに偏った連中が多い。特殊な思想を持つ人物であるが故に、常人には想定すら出来ない異常な動機を用意することが出来る。という狙いがあるのだろうか。
最終章のみ作りが違っていて『月の扉』でハイジャック犯の人質になった少女と、座間味クンが11年ぶりに再会するストーリーになっている。ベタな話ではあるが前作を読んでいると、ちょっと嬉しい。
その他の石持浅海作品の感想はこちらから