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『螢』麻耶雄嵩 ファイアフライ館に行ってみたい!

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2005年本格ミステリ・ベスト10で第3位

2004年刊行作品。このミス2005年版国内第11位、本格ミステリ・ベスト10では3位にランクインされている。同年に刊行された作品としては『名探偵木更津悠也』がある。

本作は麻耶雄嵩(まやゆたか)作品ではあるがメルカトル鮎や美袋くん、木更津悠也は出てこないノンシリーズタイトル。ちなみにファイアフライとは「」のことである。

螢

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その後、2006年にGENTOSHA NOVELS(幻冬舎推理叢書)版が登場。

更に2007年に幻冬舎文庫版が登場している。現在、比較的手に入りやすいのはこちらの版であろうか。

螢 (幻冬舎文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

麻耶雄嵩による本格ミステリ作品がお好きな方、もっと読んでみたいと思っている方。魅力的な本格ミステリ作品を楽しみたいと考えている方。木更津悠也やメルカトル鮎が出てこない、ノンシリーズ系の麻耶雄嵩も読んでみたいと思っている方におススメ。

あらすじ

楽団員七人を惨殺。狂気のヴァイオリニスト加賀蛍司が築いたファイアフライ館。怪奇スポット探索サークル、アキリーズクラブの面々は、館を買い取った先輩の佐世保左内に招待されこの地を訪れる。十年前の惨劇の夜そのままの状態が保存されている館内で、再び悪夢はくり返されるのか。そして館に秘められた忌むべき秘密とは……。

ここからネタバレ

トリックの仕掛けどころがわからない

三人称の視点と思われる人物を誤認させるテクニックがお見事。叙述トリックが仕掛けられていることは容易に想像がつくのだが、それがどこだか判らない。ヒントはあるのだがまったく気付かずに最後までいってしまった自分に絶望。相当にあからさまなヒントが沢山あったのに。思わずもう一回読み返したくなった。

もう一つの仕掛けも凄い

それからもう一つ。とても使い古されたテクニックを表裏裏返して繰り出されている。作中人物には自明の事が、読み手には巧妙に判らないように伏せられているというケースはよくあるけどその逆をやってこようとは思わなかった。この仕掛けがある分だけ、犯人へたどり着くのが難しくなっている。三人称視点誤認トリックだけでも十分なインパクトがあるのに、更なる仕掛けを盛り込んできたサービス精神の旺盛さに拍手。実に贅沢な作品だと思う。

ファイアフライ館に行ってみたい!

それにしても、雨だれの音までもが一定のメロディになるよう調整されているファイアフライ館は素敵過ぎる。聞くだけで皆殺し衝動を呼び起こす暗黒の八重奏曲「夜奏曲」は是非一度聞いてみたいものだ。って、聞いちゃうとヤバイんだろうけど。 

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