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西尾維新『刀語 第一話 絶刀・鉋』全巻レビューを始めるよ

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毎週火曜日は大長編ライトノベルの感想を書く日である(なんとなく決めた)。先週で『空ノ鐘の響く惑星で』のレビューがひととおり終わったので、今週からは西尾維新の『刀語(かたながたり)』シリーズをご紹介したい。

12ヶ月連続刊行"大河小説"の第一巻

2007年刊行。2006年に創刊された講談社BOXからのリリース作品である。タイトルに「がたり」と付くが、「物語」シリーズではないので注意。間違える人はいないと思うけど。

刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)

講談社BOXは刊行から10年が経ち、さまざまな作品が出てはいるものの、基本的には「ちょっと値付けの高いライトノベルレーベル」だと捉えている。文庫やノベルスよりは高め、でも単行本よりは安いでしょといった感じ。箱装とはいえカラー頁は最初だけだし、本文は少ないしで、なんだかもの凄い割高感を覚えるのだが、結局買ってしまうのだから、売れる作家を揃えた方が勝ちってことなんだろうなあ。

"大河ノベル"って何なの?

本書は西尾維新が手がける12ヶ月連続刊行「大河ノベル」の第一巻である。「大河ノベル」とは聞きなれない単語だが、

大河ノベル(たいがノベル)とは、ある作家が一年間、12か月連続でシリーズ作品を刊行する企画である。12か月連続刊行という試みは日本文芸界、そして世界出版界でも史上初とされる。12か月連続刊行にあたって「書き溜め」を禁止していた。

2007年の清涼院流水・西尾維新、2008年の島田荘司、2009年の定金伸治と、3年間で計4人の作家がこの企画に参加した。ただし、当初の予定通り12か月連続刊行を成功させたのは、2007年の清涼院と西尾のみである。

講談社BOX - Wikipedia より

ということらしい。毎月一冊を一年間、しかも「書き溜め」無しとは狂気に近い条件設定である。こんなの書ける作家はそうそういないだろうね。

あらすじ

丹後沖に浮かぶ小島、不承島。彼の地を訪れたのは美貌の奇策士とがめ。伝説の刀鍛冶四季崎記紀が残した十二本の刀を全て集めることが彼女の目的であった。とがめは虚刀流、七代当主鑢七花に協力を依頼する。そこへ真庭忍軍十二頭領が一人、真庭蝙蝠が襲いかかる。手にするは絶刀・鉋。初陣を迎えた七花はその襲撃を退けることが出来るのだろうか。

 

西尾維新初の時代小説?

刀を使わない剣士、虚刀流第七代当主鑢(やすり)七花が、幕府の奇策士とがめと共に、伝説の刀鍛冶四季崎記紀(しきざききき)が残した十二本の銘刀を探して歩く物語。隆慶一郎の『鬼麿斬人剣』っぽい設定だよね。十二本の刀、十二人の剣士との対戦型格闘小説というスタイルは山田風太郎的なテイストも強く感じる。

戯言シリーズで培った、超人同士の異能バトルを今度は伝奇小説の世界観で実現してみようということなのかしらんと、刊行当時は思ったものである。

この巻で登場する刀と対戦者

このシリーズの楽しみの一つは、毎回登場する個性的な銘刀(完成形変体刀)と、対戦者たちである。それぞれの刀には奇想天外なギミックが凝らされており、その刀を操る対戦者たちも並大抵の剣士ではない(なにせ西尾維新キャラだからね)。

主人公である鑢七花と奇策士とがめのコンビが、これらの難敵を如何にして倒していくが、このあたりが毎回の話のキモとなっている。

ということで、第一巻で登場する刀と対戦相手はこちら。

絶刀「鉋」(ゼットウ・カンナ)
所有者・真庭蝙蝠。「頑丈さ」に主眼が置かれている。否定姫は「世界の何よりも固き、折れず曲がらぬ絶対の刀」と称した。
切刃造の直刀。刀身は五尺ほど。鍔や鞘がなく、綾杉肌に二筋桶が彫られている。決して折れず曲がらないため、真庭蝙蝠は「永久機関のような刀」と評した。斬るよりも突く方に向いている。前所有者は美濃の涙磊落(なみだ らいらく)。

真庭 蝙蝠(まにわ こうもり)

絶刀「鉋」の所有者。真庭忍軍を参照。丹波の不承島で七花と戦い敗れる。
限定奥義:報復絶刀(ほうふくぜっとう)
絶刀「鉋」による荒い突きと、大跳躍からの袈裟懸け斬り。

刀語 - Wikipedia より

主人公コンビがいい感じ

西尾維新作品にしては珍しい、ごちゃごちゃ考えない、心のねじまがっていない(というか有り体言うとバカ)タイプの主人公がかなり新鮮。こいつはいつまで裸なんだろう。一方、ヒロイン役の奇策士とがめは、「戯言シリーズ」の子荻ちゃんとキャラ被ってるんじゃないかと思うのだけど気のせいだろうか?

時代考証がーとか、歴史と違う!とか突っ込んじゃ駄目

そんな言葉遣いしないだろ、なんてことも指摘するだけ野暮。手っ取り早く、剣で戦える時代設定だけ借りてきたって雰囲気。まあ、この辺は本編が面白ければどうでもいいかな。まだ序盤なのでキャラ立ちが弱く、剣劇シーンもイマイチ燃えないのは難点かな。それからメイド蝙蝠は喋りすぎで、なおかつ説明しすぎ。

刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)

刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)

 

アニメ化もされている

テレビアニメ版は2010年放映。こちらも原作に倣い「大河アニメ」と称して、毎月1巻分(一時間枠)が放送されるという、特殊な放映スタイルを取っていた。あれこれ突っ込みどころは数多いのだが、田村ゆかりのとがめがカワイイので全て許してしまいたくなる、罪深い作品である。

刀語 第一巻 絶刀・鉋【完全生産限定版】[Blu-ray]

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続巻『刀語 第二話 斬刀・鈍』の感想はこちらから!

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