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『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

実質的なラスボス戦、西尾維新『刀語 第七話 悪刀・鐚』

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講談社BOX12ヶ月連続刊行"大河ノベル"の第七巻

2007年刊行。12ヶ月連続刊行の七冊目。中盤の山場、VSねーちゃん戦である。

刀語 第七話 悪刀・鐚 (アクトウ・ビタ) (講談社BOX)

比較的凄惨な殺陣が連続する対戦型格闘小説である本作に、正直言って竹のイラストは合ってないんじゃないか?カワイすぎるのでは?時代物って感じじゃなくない?などと、かねがね思っていたのだけど、最近ようやく慣れてきた気がする。人間、何事も慣れてしまうものなのである。

あらすじ

陸奥・死霊山の神衛隊を全滅させて悪刀・鐚を手に入れた鑢七実は聖地・清涼院護剣寺を目指す。一方、七本目の変体刀を手に入れるべく奇策士とがめと、鑢七花の一行も四国入りを果たす。真の最強を巡って、ついに姉弟対決が実現する。圧倒的な天賦の才を誇る七実に対して、七花の勝ち目はあるのか。そしてとがめが授けた奇策とは。

この巻で登場する刀と対戦者

相手の強さで言えば、今回が実質的なラストバトルである。

悪刀「鐚」(アクトウ・ビタ)
所有者・鑢七実。「活性力」に主眼が置かれている。否定姫は「所有者の死さえ許さず、無理矢理に人を生かし続ける凶悪な刀」と称した。
変体刀十二本の中で最も凶悪な一振りとされる。忍者の道具である苦無の形をしており(小振りなため持ち運びやすいと七実に言われた)、常に雷を帯び、電極のように身体に差し込むことによって、所有者の疲弊も死も許さず人体を無理矢理に生かし続ける凶悪な刀。七実に奪われる前は陸奥の壱級災害指定地域、死霊山の祠に祀られ、死霊山神衛隊によって守護されていた。

鑢 七実(やすり ななみ)
七花の姉。特異体質のため極度に病弱で、死人のような印象の女性。極度の方向音痴。「人間一人に到底収まりきれぬ」と表現されるほどの驚異的な強さをもち、相手の技を一度観ただけで体得、二度見れば万全に自らのものとすることができるという「見稽古」という技がある。この能力により、教わっていないにも関わらず、父六枝と七花の稽古を見ることにより虚刀流の全ての技を身に着けている。だが他者の能力を習得するのは強すぎる自分の力を抑え、その強さに耐えられない体を持たせるためであり、見稽古をせずとも日本最強であることには変わりがない。また常人ならば何度も死んでいるはずの病にかかり続けているため、死なない程度の毒は全くものともしない。唯一の欠点は体力がなさ過ぎることであり、継戦能力はない。
27歳。身長四尺九寸。体重七貫六斤。趣味は「草むしり」。

刀語 - Wikipedia より

薄命タイプの最強キャラの宿命

最強の鑢七実には、やはり最強ならではの足枷が設定されていてというのは、昔ながらの薄命最強キャラ(『北斗の拳』のトキとか『るろうに剣心』の志々雄真実とか『キャプテン翼』の三杉くんとか←死んでない)の王道をきちんと踏まえていてなかなか宜しいかと。最強を「削ぎ落とす」ための、とがめの奇策もいい感じ。

中盤以降、芽生えかけていた七花の人間性が、本巻での実姉との対決を経ることで、「人間らしさ」として遂に形成されたのは皮肉な結果である。西尾維新はこういうの好きだよね。

この戦いは映像で見るべき

VS七実戦は『刀語』の対決の中でも、とりわけ映像(アニメ版)で見て頂きたい一作だろう。でも、従来のシリーズとは、少々異なる演出手法が使われていて興がそがれる。このあたりは好悪が別れるところかもしれない。フツウにやれば良かったと思うんだけど。大事な一戦であるだけに捻りを入れ過ぎた感がある。

刀語 第七話 悪刀・鐚 (アクトウ・ビタ) (講談社BOX)

刀語 第七話 悪刀・鐚 (アクトウ・ビタ) (講談社BOX)

 

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