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『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

とうとう対戦相手が人ですらなくなった、西尾維新『刀語 第八話 微刀・釵』

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講談社BOX12ヶ月連続刊行"大河ノベル"後半戦に突入

2007年刊行。シリーズ八作目。月一冊の全十二巻構成。全体の2/3が終わって、そろそろ後半戦といったところ。

刀語 第八話 微刀・釵 (講談社BOX)

あらすじ

伝説の名刀、四季崎記紀の変体刀を七本まで蒐集した奇策士とがめと鑢七花。二人は幕府監察所総監督否定姫の情報に基づき一級災害指定地、江戸は不要湖を訪れる。あえて変体刀の情報をリークした否定姫の真意は如何に。人間の存在を許さない人外魔境の地、不要湖では恐るべき強敵が待ちかまえていた。自動人形日和号VS虚刀流。とがめはいかなる奇策を七花に授けたのか。

この巻で登場する刀と対戦者

今回の対戦者は自動人形(オートマータ)である。とうとう「対戦者そのものが刀」というなんだか意味が分からない展開になってきている。日和号の動力源と、それに対するとがめさんの奇策にビビる。エスエフ的なお話になっちゃうのかな、これ。

微刀「釵」(ビトウ・カンザシ)
所有者・日和号。「人間らしさ」に主眼が置かれている。否定姫は「武器でありながら人である、恋する殺人人形とも言える刀」と称した。
刀の所持者(前述)を参照。「微刀」は「美刀」とかけている。自らの愛した女性を象っていることから、四季崎記紀の人間らしさが唯一かいま見える刀とされる。

日和号(びよりごう)
四季崎記紀が生前もっとも愛した女性を模したからくり人形であり、微刀「釵」そのもの。江戸の壱級災害指定地域、不要湖を数百年にわたって徘徊し、射程距離に入った人間を無差別に攻撃する。このため不要湖にはうかつに人間が近づけず、それが理由で壱級災害指定地域に指定されている。「不要湖に捨てられたがらくたの化身」などと言われ、「がらくた王女」とも呼ばれている。
四本の腕と四本の脚を持ち、首が百八十度回転し、口にあたる部位からは槍を突き出す。脚を変形させてヘリコプターのように飛ぶことも出来る。動力源は太陽光。
年齢不詳。身長六尺八寸。体重十七貫三斤。趣味は「無趣味」。
刀語 - Wikipedia より

否定姫のキャラが立ってきた

今回の舞台は、江戸の不要湖。って、それどこだよ?全然江戸らしくねええ。本シリーズでの江戸は日本有数の災害指定地域となっている。通史はまったく気にせず書いているからあたりまえなのだが、実際の地勢的な特徴さえもが華麗なまでにスルーされていて、現実感がまるで感じられない。とはいえ、このお話では尾張に幕府がある設定なので、都市開発されなかった江戸なんてこんなものだったのかもしれないけど。

否定姫のビジュアルはけっこういい感じ。やっとキャラが立ってきたかしら。尾張幕府の人たちは腑抜けしかいないのか。出自不明の二人しか出てこない政府組織ってどうなのよ。あいかわらずまにわにの皆さんはかませ犬として見事に機能。ここまで徹底していると安心する。

で、ようやく七花の人間的成長にスポットがあたってきた。このキャラクターの成長のベクトルが今後の物語のキーポイントになる筈。というか、それくらいしか盛り上がれる部分が無いような……。あとは否定姫の正体くらいか?これはおそらく四季崎記紀つながりなのではないかと邪推しているのだが、果たしてどうなることやら。

刀語 第八話 微刀・釵 (カンザシ) (講談社BOX)

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髪型ショートになったとがめさんを愛でる巻

前巻の鑢七実との対戦の余波で、ロングだったとがめの髪はバッサリ断ち切られてしまいショートカットに。アニメ版8巻での最大のウリは、髪型ショートになったとがめさんの動く姿を拝めることである。

この作品、西尾維新作品にしては、登場する女性キャラクターが少ないので、正ヒロインのとがめさんは、いろいろやらされていて結構大変なのである。

刀語 第八巻 / 微刀・釵 【通常版】 [DVD]

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