北方謙三版「水滸伝」第四弾!
2001年刊行作品。北方謙三版「水滸伝」の連続レビュー。先週の第三巻に続いて、今回は第四巻「道蛇の章」である。
集英社文庫版は2007年に刊行されている。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★★(最大★5つ)
「水滸伝」が好きな方、中国史、特に宋代の歴史が好きな方、光栄のゲーム版『水滸伝』にハマっていた方におススメ!
あらすじ
思わぬ成り行きから妾の閻婆惜を死なせてしまい、宋江は逃亡者として各地を徨うことになる。付き従うのは武松。世の乱れを自らの目で見極めるべく、宋江の果てしない旅路は続く。一方、閻婆惜の母馬桂は娘の死が宋江の手によるものだと知らされ衝撃を受ける。しかしそれは馬桂を青蓮寺の間諜に引き入れんがための、李富の策謀だった。梁山泊と青蓮寺。両者の暗闘は続く。
解説でネタバレするのホントにやめて!
いくら完結してる作品の文庫版だからって、ネタバレし過ぎだろう。池上冬樹ってバカなの?久々に解説読んで腹が立った。これは酷すぎる。解説文の前に「ネタバレ注意」の表記くらい入れるべきだろう。単なる翻訳じゃなくて、オリジナルのエピソードを思いっきり換骨奪胎している北方版だからこそ、そうした配慮は必要だった筈。勘弁してほしい……。
↓ここからネタバレ。
中国史は北方民族との戦いの歴史
宋代を舞台とした作品の虚しさというか、哀しさは北宋にしても南宋にしても、いくら頑張っても時が来れば「金リセット」「元リセット」が待っているということ。
その昔の光栄ゲーム『水滸伝』は靖康の変(金による北宋滅亡)までに勝利条件をクリア出来ないとゲームオーバーなんていう、すごいルールがあったので、そのトラウマが個人的には大きいのかもしれない。梁山泊の連中がいくら頑張っても、北から女真族(金)の大軍がどどーんと押し寄せ来てきたら滅亡エンドなのではという疑念が拭えないわけである。
史実上の宋王朝は北方異民族の南下による侵略を受けて滅びてしまう。宋以前の王朝は、地方の軍事勢力の離反に悩まされたので、宋王朝は徹底した文治主義で軍を押さえ込んでいた。しかしその代償として、権力を獲得した官僚は腐敗し、弱体化した軍隊は北方民族の侵攻を押さえきれなかったのが歴史のなんとも皮肉なところ。
遼や金も登場、東洋史好きには嬉しい
で、魯智深の兄貴、宋を倒すには北と手を結ぶべき!なんて語るや、はるばる遼まで遠征しに行ってるんだけど、どんだけ風呂敷広げてるんだか。どうやら影では女真族(金)も動いて居る気配。しっかり宋国外の勢力図も見据えた上で話を書いているのが判り、これは少しは期待していいのかも!と、わくわくしてきた次第。燕雲十六州なんて言葉久しぶりに聞いた。世界史好きとしては嬉しい。