理論社、中央公論新社、角川、三社から作品が出ている
1993年刊行作品。荻原規子(おぎわらのりこ)作品としては初期のものになる。
単行本版は児童書の版元として知られる理論社から世に出ている。いかにも児童文学!といった趣きの装丁である。
続いて1999年には中央公論新社のC★NOVELS Fantasiaからノベルス版が登場。こちらは、レーベルの属性もあるけど、かなりライトノベルテイストの装丁である。
そして2007年には中公文庫版が発売。アラビアンナイト風のカバー。
さらに2016年には角川文庫版まで登場。『西の善き魔女』が角川に引っ越してきた、波及効果だろうか。こちらは刺繍をあしらったお洒落なカバーになった。現在読めるのはこちらの版であろう。書き下ろし短編とあとがきをが付いてくるので、読むなら間違いなく角川版かな。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
少女の成長物語を読みたい方、異世界召喚系のお話が好きな方、友達に彼氏を取られたことがある人、アラビアンナイトテイストのお話が好きな方におススメ。
あらすじ
親友に想い人を奪われ、失意の中で眠りに就いたあたし。目覚めるとそこはアラビアンナイトの世界。チグリス川の岸辺で出会ったターバンを巻いた青年は「あたしはジンなのだ」という。人智を越えた不思議な力を手に入れたあたしは、知らず知らずのうちに王国の跡目争いに巻き込まれていく。あたしは無事に元の世界に帰ることができるのだろうか。
ここからネタバレ
異世界に迷い込んだ少女の成長物語
『これは王国のかぎ』は、現実世界で精神に傷を負った少女が、異世界での試練を通して成長し、再び現実の世界へ還っていくというタイプの巻き込まれ型異世界冒険譚である。
主人公の一人称が「あたし」なので、過剰な自分語りを最初はちょっと警戒したのだけれども、この子はけっこう淡泊。重たくないのだ。異郷のでの冒険も、夢だと割り切っているからなのかもしれないが、ありえない状況をあっさりと受け入れているところが特徴的。この手の成長物語系の作品はえてして説教臭さが鼻についたりもするのだが、本作に関してはその点は控え目。それほど深刻な話にはならないのでアッサリと読める。
なお、続編というか、後日譚的な作品として『樹上のゆりかご』が出ているので、是非セットで読んでおきたい。