秋月涼介の第三作
2004年刊行作品。第20回のメフィスト賞受賞作品であった『月長石の魔犬』、第二作である『迷宮学事件』に続く、秋月涼介の三作目の作品である。内容的には『月長石の魔犬』の続編に相当する。
石細工屋の風桜青紫(かざくらせいし)、解剖医の嘉神沙遊良(かがみさゆら)、キャリア警視の鴻薙冴葉(こうなぎさえは)と、そのネーミングさすがに凝りすぎだろと突っ込みたくなること請け合いなのだが、まあ、これがこの作者のノリだと思われるので、許容するしかない。
ちなみにノベルス版のみで、文庫化はされていない。紙の本として世に出ている秋月涼介作品は全てノベルス版で、文庫版は残念ながら存在しない。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
自分が書いた小説の主人公に、ものすごく凝ったネーミングをしてしまったことがある人、爆弾魔、切断魔、そして放火魔と、連続殺人犯が多すぎる街に興味のある方におススメ。
あらすじ
悪夢の爆弾魔、見えざる左手切断魔、数々の未解決犯罪の影に怯えるこの街に新たな犯罪者が降臨した。相次ぐ連続放火殺人事件。鴻薙冴葉警視によって"金属の火蜥蜴"と名付けられた放火犯は警察の厳重な警戒をものともせずに犯行を重ねていく。増え続ける出火ポイント。殺害された被害者たちに共通する要素とはいったい……。
ここからネタバレ
ライトノベルっぽい売りかたに変わった?
前作とはうってかわってライトノベルテイストな装丁。本文内にも挿画が入った。内容や想定読者を考えると賢明な判断か。連続放火殺人を追うミッシングリンクモノの変形。この事件と平行して悪夢の爆弾魔さんや見えざる左手切断魔さんが暗躍していたりするので、この巻から読み始めるのは避けた方が無難。きちんと前作から読むべき。
連続殺人犯のメッカ(笑)
「母親を火事で亡くした人物」というのが大量に出て来て、いくらなんでも無理がありすぎだろうと思ったけど、それなりの理由がラストで開示されるので、まあお話しとしては出来ないこともないかと、いちおうの納得。しかしあの犯人があれだけの規模の着火装置を独力で作って仕掛けて回れるかねと、素朴な疑問が残ったりもする。
それにしてもこの街は連続殺人犯のメッカ。辛すぎる。絶対に住みたくねえ(笑)。未だ正体不明の悪夢の爆弾魔。次あたりで少しは顔を出してくれるだろうか。地味に伏線も撒いているようだし、風桜クンはやっぱり怪しいね。
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