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『黒い仏』殊能将之 終盤の超展開に瞠目せよ!!

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殊能将之作品の懐の深さを知る一作

先日、『樒 / 榁』の感想を書いたので、もうすこし殊能将之(しゅのうまさゆき)作品の紹介を続けてみる。

『黒い仏』は2001年刊行作品。第13回メフィスト賞受賞作となった『ハサミ男』で衝撃的なデビューを飾った、殊能将之の第三作目にあたる。

講談社文庫版は2004年に刊行されている。

黒い仏 探偵石動シリーズ (講談社文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

どんな結末を提示されても受け入れることが出来る心の広い方。ありきたりのミステリ作品に飽きてきた方。殊能将之作品だから、石動戯作登場作品だから、とりあえず読んでおこうと思う方におススメ。

あらすじ

名探偵石動戯作に持ちかけられた新たなる依頼は9世紀に天台宗の名僧が日本に持ち帰ろうとした謎めいた宝物の探索だった。石動と助手の徐彬は早速福岡県のとある寂れた寺院へと赴く。そこは顔面を削り取られた本尊を「くろみさま」と称して祀る妖しげな寺だった。一方、平行して進行する奇怪な密室殺人。二つの事件は思わぬ形でリンクしていた。

ここからネタバレ

愛すべきバカミス

個人的に『ハサミ男』は大絶賛の大傑作。でも二作目の『美濃牛』がどうしても好きになれなかったわたし。探偵役の石動戯作(いするぎぎさく)の饒舌さが、いまひとつ肌に合わなかった。

根っからの本格ファンでない読み手としては、探偵のキャラクターを愛せないとこの手の作品は読み進めるのが厳しい。そんなわけで長らく読まずにいたこの作品なのだが、読んでみて後悔。あ、つまらなくて後悔してるんじゃなくて、こんなに素晴らしいバカミスを読まずにいた自分に後悔ということである。

終盤の超展開に瞠目せよ

徐彬(アントニオ)の「能力」が明らかになるあたりから物語の性質はコペルニクス的大転回を遂げていき、驚愕といえば驚愕というしかない事件の真相が明らかにされたときにはもう笑うしかなかった。こんなのアリかという意見も多いと思うけど、わたし的には十分アリ。究極の禁じ手を使ってしまった感もあるけど、ここまで読者の予想を裏切ってくるのは凄い。

ちなみに、本作は2001年の夏。四国旅行中に風邪をひいてしまい、よさこい祭りに湧く高知のしなびたビジネスホテルの一室にて熱にうなされながら読了。熱でぼーっとしていた頭には、良いクスリになったのであった。

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