ネコショカ

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『航路』コニー・ウィリス 臨死体験と死後の世界


驚愕の超絶展開が楽しめる一作

2002年刊行作品。作者のコニー・ウィリスは1945年生まれのアメリカ人SF作家である。

航路(上)

航路(下)

原著『PASSAGE』は2001年に米国で刊行されている。米国ローカス賞のSF長編部門を受賞。日本国内でも、ベストSF2002海外篇の第1位。このミス2002年海外部門17位にランクインしている。

ハヤカワ文庫版は2013年に登場している。表紙のテイストが単行本とはかなり変わってしまった。わたし的には単行本時代のデザインの方が好み。

航路(上) (ハヤカワ文庫SF)

航路(上) (ハヤカワ文庫SF)

 
航路(下) (ハヤカワ文庫SF)

航路(下) (ハヤカワ文庫SF)

 

あらすじ

認知心理学者のジョアンナはNDE(臨死体験)を科学的に解明すべく、体験者への聞き取り調査を続けていた。神経内科医のリチャードは人為的にNDEを発生させる方法を発見。慢性的なNDE経験者不足に悩むジョアンナは彼との共同研究を受け入れる。しかしトラブルの連続で予定していた被験者は次々とキャンセルに。意を決したジョアンナは自らが被験者となることを決意するのだが……。

大長編をサクサク読ませる圧倒的な筆力

単行本版はハードカバー二段組み800頁超の壮絶なボリュームだったが、あいかわらず読みやすさは抜群。長い話なのに、読者の注意力、興味を途切れさせずにつないでいくのが実に巧い。第一部~第二部なんてのは「あとちょっとで思い出せるのに思い出せないもどかしさ」だけで全体の2/3を牽引し切ってしまう。これ、半分の量で書けるんじゃないかというツッコミはあると思うけど、素直にここは圧倒的な筆力に感服しておこう。

死後の世界はどうなるの?

本作では「人間の死後はどうなるのか」という難しいテーマを扱っている。全く内容の予想がつかないまま、第一部ラストでまず最初の驚愕展開。そんなバカなと思っていると第二部ラストではその遙か上を行くショッキングな事態が読者を待っている。相当にすれた読み手でもこんなストーリー展開はまず予想出来ないだろう。終盤にかけて加速していく物語世界の吸引力にただただ圧倒された。

終盤の展開が凄い

そしてラストの第三部はコニー・ウィリスお得意の感動巨編に突入する。全ての伏線を丹念に回収しながら、たたみかけるように収束させていく手練手管には脱帽。ただひたすらに不可避の悲劇的結末に雪崩れ込んでいく『ドゥームズデイブック』の透明で底冷えのする哀しみもあれはあれで感動的だったけど、それぞれが自分に出来る最大限の努力をやってより良い未来をつかみ取ろうとする本作の姿勢も良かったと思う。メイジーがジョアンナに寄せていた信頼感の強さには泣けた。

しかし日本人だとあまり実感が湧かないけど「あの事件」は欧米人にとっては共通認識となるくらいの大惨事なんだろうなあ。このお話、日本を舞台にして作り替えるとしたら主人公はいったいどこに飛ばされるのだろうか。

航路(上)

航路(上)

 
航路(下)

航路(下)