ネコショカ

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『殺人喜劇の13人』芦辺拓 第1回の鮎川賞受賞作


芦辺拓のデビュー作

1990年刊行作品。作者の芦辺拓(あしべたく)は1958年生まれ。本作がデビュー作となる。東京創元社による公募新人賞、鮎川哲也賞の第一回目の受賞作品である。ちなみに、この時の佳作入選が二階堂黎人の『吸血の家』であった。

芦辺拓による「森江春策の事件簿」シリーズの一作目でもある。

殺人喜劇の13人

殺人喜劇の13人

 

 文庫版は何故か講談社から1998年に登場。

殺人喜劇の13人 (講談社文庫)

殺人喜劇の13人 (講談社文庫)

 

その後、2015年にお里帰りとも言うべきか、創元推理文庫版が登場した。現在手に入りやすいのはこちらであろう。すっかりイマドキ風のデザインになってしまい、高齢読者としては驚きを隠せない。

殺人喜劇の13人 (創元推理文庫)

あらすじ

かつては病院だったという建物を改修した泥濘(ぬかるみ)荘。古びたアパートに住み着いたD大学のミニコミ誌仲間が次々と殺されていく。それも縊死。毒殺。刺殺。ありとあらゆる方法で。疑心暗鬼に陥ってゆく仲間たち。最後にあらわれた男、森江春策が謎を解き明かす。

鮎川哲也賞はこの一作から

三十年近い歴史を誇る鮎川賞。二階堂黎人、加納朋子、近藤史恵、貫井徳郎、似鳥鶏、最近では『屍人荘の殺人』の今村昌弘もそうだよね。錚々たる面々を世に送り出してきた、ミステリ系の公募新人賞だが、その最初の受賞作品が芦辺拓の『殺人喜劇の13人』である。

本作で登場する探偵役の森江春策を主人公としたシリーズは、この後、二十作以上も刊行される息の長い作品となっていく。

 

最初はちょっと読みにくい

鮎川賞受賞作。それも第一回作品。と、くればバリバリの本格なのである。延々と続く70年代ノリな作中人物の手記に閉口させられる。これが滅法読みづらくて少々しんどい。後書きによるとこれでも文庫化にあたっての加筆でリーダビリティを向上させているらしい。まずは我慢して読み進むべし。ここでめげてはいけないのだ。

全体の2/3を占めるこの文章が「手記」であることにかなり後半まで気付かなかったわたしは多くの伏線を見逃してしまっていた。ダメな読者である。

森江春策が出てきてからが本番

この「手記」の部分が終了すると名探偵森江春策登場。後半の謎解きモードに入るのだが、ここでかの「手記」に見事なまでの仕掛けが施されていることが披瀝されていく。

暗号から密室、アリバイ、果ては時刻表トリックまで、ミステリならではの様々な仕掛けをそれこそ惜し気もなくふんだんに投入してのけた力作であり、鮎川賞の一作目として選ばれたのも納得の作品なのである。

殺人喜劇の13人 (創元推理文庫)

殺人喜劇の13人 (創元推理文庫)