ネコショカ

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今村昌弘『屍人荘の殺人』ミステリランキング三冠の問題作!


昨年9月から毎日更新を始めたが、本日で200日目、紹介冊数でも200冊目となる。いつもご覧いただいている皆さまありがとうございます。200エントリ目の振り返り記事は、近いうちに上げる予定です。

2017年を代表するミステリ作品

2017年刊行。今村昌弘のデビュー作にして第27回鮎川賞受賞作。そして2018年版の「このミステリーがすごい!」第1位、「 週刊文春ミステリーベスト10」第1位、「本格ミステリ・ベスト10」第1位と、ミステリ系ランキングの三冠という偉業を成し遂げた作品。この年の「本屋大賞」でも第3位にランクインしている。

屍人荘の殺人

あらすじ

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲は会長の明智恭介と共に、映画研究部の夏合宿に参加する。しかし、突如発生した異常事態のために、参加者たちは宿泊地であるペンション紫湛荘に籠城せざるを得なくなる。外部への連絡も出来ず、脱出手段をも奪われた彼らに、翌朝更なる悲劇が訪れる。密室の中で、メンバーの惨殺死体が発見されたのだ。

クローズドサークルの作り方(笑)

本格ミステリと言えば嵐の山荘、絶海の孤島といったクローズドサークルだ。外界に連絡が取れず公的権力の介入を許さない特殊な環境下で初めてこの種の物語は成立する。いかにしてこのような状況を作り上げるかは、ミステリ作家たちが常に苦心してきた部分だが、本作では衝撃的な方法でそれを成し遂げている。

冒頭の意味深長な仄めかしや、タイトル名からなんとなく想像はついたものの、ここまで徹底してやってくるとは(笑)。

ミステリにエスエフの要素を盛り込んだ作品としては、J.P.ホーガンの『星を継ぐもの』や三雲岳斗の『M.G.H.楽園の鏡像』、森博嗣の『女王の百年密室』などの先行例があり、ファンタジーの要素を持ちこんだ作品としては上遠野浩平の「調停士」シリーズや米澤穂信の『折れた竜骨』などの事例がある。

だが、これらの作品はそもそも最初から宇宙空間であったり、未来世界、ファンタジー的な異世界が舞台の作品であった。それに反して『屍人荘の殺人』では、一見すると通常の現実世界を舞台にしておきながら、いきなり超自然的な現象がてんこ盛りで発生する。読者がまったく予想が出来ていない状況での超絶展開。まずここで度肝を抜かれる読み手も多かったのではないだろうか。

屍人(ゾンビ)の有効活用方法

本作の魅力的なところは、本格ミステリとしての成立要素の中に、屍人の存在をきっちり織り込んでいるところだろう。屍人が存在したからこそ犯人は殺人を決意し、屍人が存在したからこその特殊な密室が成立する。特殊な世界観を持つミステリ作品は、「だからこそ成立する」状況を活かしたトリックがウリとなるのだが、本作でもいかんなく屍人の存在が活用されている。

また、屍人が登場することで、本格ミステリとしての謎解き要素に加えて、サスペンスホラーモノ定番の主人公たちは生き残れるのかという、まったく別の物語要素が加味されており、ダブルで楽しめる趣向となっている。本格ミステリの手順を踏みながら、ガチのゾンビモノの展開を織り込むのは相当な難易度だと思われる。このあたりも、本作が高く評価された所以かもしれない。

比留子先輩の正体は?

比留子ちゃんは本作登場の時点で、既に実績を積んだ名探偵だった。彼女が何者であったのかは本作中では明らかにされていない。

「ヒルコ」と言えば古事記に出てくるイザナギとイザナミの間に生まれた最初の子どもを想起させられる。

『古事記』において国産みの際、イザナギ(伊耶那岐命)とイザナミ(伊耶那美命)との間に生まれた最初の神。しかし、子作りの際に女神であるイザナミから先に男神のイザナギに声をかけた事が原因で不具の子に生まれたため、葦の舟に入れられオノゴロ島から流されてしまう。次に生まれたアハシマと共に、二神の子の数には入れないと記されている。棄てられた理由について『古事記』ではイザナギ・イザナミ二神の言葉として「わが生める子良くあらず」とあるのみで、どういった子であったかは不明。後世の解釈では、水蛭子とあることから水蛭のように手足が異形であったのではないかという推測を生んだ。あるいは、胞状奇胎と呼ばれる形を成さない胎児のことではないかとする医学者もある。

ヒルコ - Wikipedia より

このような由来を持つ神であるだけに、フツウは「ヒルコ」という音の名前を子供にはつけない。彼女の生い立ちには、かなりワケアリの要素がありそうである。

斑目機関の全貌についても明らかにされているとは言えず、このあたりも含め続巻の『魔眼の匣の殺人』に期待しろってことなのかな。

魔眼の匣の殺人

魔眼の匣の殺人

 

 

2019年劇場版が登場

本作は劇場版の公開が決まっている。

比留子ちゃん役に浜辺美波!『君の膵臓をたべたい』の山内桜良がハマり役だっただけに、探偵役をいかにこなすかが楽しみですな。神木隆之介は葉村クンだと思うけど、中村倫也は誰役になるんだろう、まさかの明智先輩?どの程度ガチで屍人の臨場感を出せるかどうかがポイントになってくるような気がするね。

コミカライズ版も出るみたい

マンガ版も登場する模様。ウェブ上のマンガ媒体「少年ジャンプ+」で連載される。2019年初夏とあるので間もなくだね。劇場版の公開に併せているのかな?絵柄的には微妙な気がするけど、実物を見てから判断したいところ。

www.shonenjump.com

 

 

 

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人