「新耳袋」から99編を恩田陸がセレクト
本書は2006年刊行。「新耳袋」は名前は聞いていたけど実際に読むのは初めて。「新耳袋」は怪異蒐集家の木原浩勝と中山市朗が集めた、現代の怪異譚集なのである。
本作は、全十巻で完結した「新耳袋」全九百九十話の中から、作家恩田陸が九十九編をセレクトしたものである。こういうリサイクル商売もアリなのね。メディアファクトリーの編集者は頭が良い。「誰が選んだか」という視点はけっこう大切。
ちなみに「新耳袋」とあるからには、「耳袋」もあるのかな?と思うところだが、オリジナルの「耳袋」は江戸時代の旗本であり、南町奉行も務めた根岸鎮衛が集めた怪談集なのだそうだ。昔から、こういうの好きな人はいたんだね。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
"実話"系の怪談話を楽しみたい方。夏なので怖ーい話をたくさんまとめて読んでみたい方。恩田陸がセレクトした怪奇譚に興味がある方。「耳袋」というキーワードに反応してしまう方におススメ。
内容はこんな感じ
新耳袋。それは1990年から2005年まで、足かけ十五年の歳月を費やして蒐集された全十夜、九百九十の物語。丹念な取材に基づき"実話"だけを拾い集めた現代の怪談集である。昨年完結した新耳袋を、作家恩田陸が独自の視点から解体・再構築を試みる。選び抜かれた九十九話で送る新コレクション。新たな恐怖がここに始まる。
ココからネタバレ
蒐集譚ならではのたどたどしさ
百話までやらないのは、やはり怖ろしいものを招いてしまうからだろうか?一編は長くても数ページ。短いものは数行で終わってしまうので、サクサク読める。その気になれば一晩で読めてしまえそう。あえてそういうスタイルにしているのだろう。
もともとの語り手のトーンを活かしたいのか、文章は決して上手くない。文体もまちまちである。しかし、このたどたどしさが逆に、怪異の生々しさを伝えているようで、不思議な臨場感を生んでいる。
恩田陸ならではの怪異譚チョイス
今回は恩田陸セレクトってことで、怪談というよりは、不思議な話が多い。体験者の経験を綴るだけで、どうしてそうなったのかは一切語られない。怪異の数々は説明がつかない事ばかりなのだが、その背景に人間のどす暗い怨念が透けて見えるのが怖ろしい。
余分な情報が無いだけに、読者自身であれこれ想像してしまい、より恐怖をよりエスカレートさせてしまうのだ。食器棚の話とか、縁の下の櫓の話とか、秘密の地下室の話とかマジで怖かったよ。
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