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氷室冴子『白い少女たち』と昭和50年代のコバルト文庫


氷室冴子の『白い少女たち』について感想をあげるつもりであったが、刊行当時の状況を調べているうちに、昭和50年代のコバルト文庫についても触れたくなってしまった。ということで、『白い少女たち』の感想に加えて、昭和50年代のコバルト文庫について雑にまとめてみたのが本エントリである。

氷室冴子最初の一冊

さて、今回ご紹介する『白い少女たち』は1978年刊行作品である。なんと初版は昭和53(1978)年。40年以上も前の作品となってしまった。

白い少女たち (集英社コバルト文庫)

前回紹介した『さようなるアルルカン』収録の同名タイトルが、本当は一番最初に書かれた氷室作品(「小説ジュニア青春小説新人賞」への応募作だった)なのだが、書籍として出たのは本書の方が先になる。

あらすじ

札幌の女子高、紅華学園。ミッション系の中高一貫校に通う三人の少女、倫子(ともこ)、碧、瑞穂 。クラスメイトであった千佳の失跡は、彼女たちに大きな衝撃を与える。千佳は何故姿を消したのか。苦悩する瑞穂。唯一事情を知る倫子は頑なに口を閉ざす。偶然からその秘密を知ってしまった碧は、過酷な現実に打ちのめされる。

女子校の寄宿舎で暮らす少女たちの物語

成績優秀だが、心の中に闇を抱え誰とも打ち解けない孤高の少女倫子。快活明朗で誰ともでも仲良くなれるが、一定の線から先には誰も入れようとしない碧。苦労知らずの優等生瑞穂。三人の少女をメインに物語は進行していく。失踪した少女千佳をめぐり、彼女たちの秘められた過去が明らかになっていく筋立てである。

主人公的な役割を担う香月倫子は、超然とした群れない優等生であり、どことなく『さようならアルルカン』で登場した柳沢真琴や、小田桐さんに似通ったキャラクターであり、氷室冴子的にお気に入りの人物像なのかもしれない。『なぎさボーイ』シリーズの槇修子あたりにも通じるところがあるかな。

幼少時の辛い体験から自分を許すことが出来ず、他者との交わりを避けてきた倫子が、クラスメイト千佳の失跡をきっかけとして、自身の人生を見つめなおし、再び他者と心を通わせるようになっていく。人間には誰にでも運命を呪わずにはいられなくなる時がある。試練を迎えた時に、人はどう立ち向かえばいいのか。「今、生きている」ことの意味を噛みしめることの出来る名作である。

ちなみに、初読時のわたし(15歳)の読書記録を遡ってみたところ、でもこの話「今、生きている」側だから言えることだよねという、ひねくれた感想が残されていた。嫌なガキである(笑)。生存者バイアスだよねというツッコミは当然出てくる話ではある。

昭和50年代のコバルト文庫

正確に言うと、当時はまだコバルト文庫ではなく、集英社文庫コバルトシリーズ(集英社文庫の方が後から出来る)だが、便宜上コバルト文庫と書かせてもらおう。

コバルト文庫は1976(昭和51)年創刊だが、前身的な存在として1965(昭和40)年創刊のジュニア小説レーベルコバルト・ブックスがあった。Twitterでいくつか画像が上がっていたので、埋め込み引用でご紹介させて頂く。表紙絵がどれも素晴らしい。

コバルト・ブックスの作品一覧はありさとさんのところにあった。いつもながら情報量が凄い。

コバルト文庫は創刊後のしばらくは、コバルト・ブックスの再刊が多く、新刊についてもコバルト・ブックス時代の作家の起用が多かった。

以下は、『さようならアルルカン』『白い少女たち』の巻末広告の一部である。当時のラインナップを多少なりとも感じ取ることが出来るだろうか。

昭和50年代後半のコバルト文庫ラインナップ1

昭和50年代後半のコバルト文庫ラインナップ2

昭和50年代後半のコバルト文庫ラインナップ3

昭和50年代後半のコバルト文庫ラインナップ4

昭和50年代後半のコバルト文庫ラインナップ

現在では、ファンタジーあり、学園ドラマあり、歴史モノあり、エスエフありとなんでもオッケーのコバルト文庫だが、当時のラインナップは少女たちの日々の悩み、人生をどう生きるべきか、そして恋愛や性の問題を取り上げていることが多かったようだ。

同様にありさとさんのところから、『白い少女たち』が登場した、1978年のコバルト刊行リストをご紹介させて頂く。

若桜木虔の『宇宙戦艦ヤマト』ノベライズや、豊田有恒の「SF傑作選」のような例外もあるが、おおむね作品傾向は上記で示したテーマに沿ったものが多いのではないだろうか。

『白い少女たち』の表紙デザインについて

さて、最後にもういちど『白い少女たち』の話に戻る。

本作は少女たちの性の問題について、非常にデリケートな話題を扱っている作品である。しかしその割には、カバーデザインがそぐわなく感じるのである?男性の目線で見てしまうからかもしれないが、いささかドキッとしてしまう(十代の頃初めて読んだときはそう感じた)セクシャルな絵柄ではないだろうか?

この時期のコバルトのラインナップで、Amazonで書影が探せるものをピックアップしてみた。先ほどの広告の絵柄と含めて比較してみても、『白い少女たち』のデザインは突出しているように見えるのだ。

腕の中で朝まで眠れ (集英社文庫―コバルトシリーズ 43E)

美千の性典 (1979年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)

蔵王絶唱 (1979年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)

またたかない星 (1979年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)

とはいえ、コバルト文庫の主要ターゲットは十代の女性なので、彼女たちにとってはさほど違和感のデザインだったのかもしれない。このあたりは当時、氷室作品を読まれていた方に、是非伺ってみたいところである。

白い少女たち (集英社コバルト文庫)

白い少女たち (集英社コバルト文庫)

 

以上、きちんとした結論が出ないままだけど、今回はこんなところで。

コバルト文庫の歴史を知るには(おまけ)

こちらの書籍が参考になりそう。いずれ読んでみるつもりなので、気長にお待ち頂きたい。

コバルト文庫で辿る少女小説変遷史

コバルト文庫で辿る少女小説変遷史

 
コバルト文庫40年カタログ コバルト文庫創刊40年公式記録

コバルト文庫40年カタログ コバルト文庫創刊40年公式記録

 

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