新井素子、25歳から34歳時代のエッセイ
1994年刊行作品。単行本版は廣済堂出版から。
主として廣済堂出版の「クロスワードクラブ」に掲載されていたエッセイをまとめたもの。一番古い記事はなんと1985年。最新の記事で1994年なので、けっこう執筆年代には幅がある。新井素子は1960年生まれなので、御年25歳から34歳までの生活体験を元にした内容となっている。
新井素子は小説作品以外にも、エッセイ系の著作が相当数あるが、『ひでおと素子の愛の交換日記』 (これはあずまひでおとの共著だが)『新井素子の未知との遭遇』『とり散らかしておりますが』に続く、四冊目のエッセイ作品ということになる。
文庫版は講談社から1999年に登場。わたしが読んだのはこちらの方。
内容はこんな感じ
仕事で忙しいダンナの健康管理とダイエットはどうすればいいの?共稼ぎ家庭で、能力ゼロのダンナに家事を仕込むには?主婦には会話をするチャンスが少ないのでは?名字についてのこだわり。臓器移植、開かずの踏切、過労死の社会問題についての考察。そして悩める若者たちへのメッセージ等々、作家新井素子が綴る和み系エッセイ集。
懐かしいあの人の昔話を聞かされている感じ
新井素子のエッセイは久しぶりに読んだ(当時)。印象としては、長らく会っていない知り合いの、ちょっと前の消息を久しぶりに聞きましたという感じ。なにせ20世紀に書かれた作品なのでどうしても古さは感じてしまう。まあ、それはそれで懐かしくていいけどね。
ぬいぐるみ数百体が常時散乱する室内。壮絶な蔵書の数。外飼猫が持ち込む蚤。こんな部屋をハウスキーピング出来るのはある意味すごい主婦なのかもしれない。しかし、変わってないなあこの人。中学時代からやっている、友人を集めた月1のティーパーティをまだ続けていることに驚愕した。すごい。
解説が氷室冴子!
解説が氷室冴子なのでこれまたビックリ!単行本版を持っていないので確認が出来ないのだけど、これって文庫版だけなのだろうか?単行本版なら1994年、文庫版なら1999年のものだから、いずれにしても氷室冴子がほとんど書かなくなっていた頃の貴重な文章ということになる。
新井素子と氷室冴子って、氷室冴子の方が随分と年上のような印象があるのだが、実は三歳年上なだけなんだよね。これは同世代人と言っていい。新井素子のエッセイなんかでも時々、氷室冴子は言及されている。1992年の対談集『ネリマ大好き』では氷室冴子にワープロを紹介したのは新井素子であることも判明している(p73)。けっこう仲良かったのかななんて思うと、なんだかしみじみしてしまうのである。