「西の善き魔女」シリーズの外伝作品
2000年刊行。『西の善き魔女』シリーズ一冊目の外伝作品である。
本編は第五巻である「闇の左手」でいちおうの完結を見ているのだが、「西の善き魔女」シリーズその後、三作の外伝が書かれている。
2002年に刊行された愛蔵版(全五巻)では第3巻に「金の糸紡げば」のエピソードは収録されている。
2005年に中公文庫版が登場しているのだが、こちらは「第七巻」として登場している。なぜ刊行順を変えたのであろうか?
そして2014年刊行の角川文庫版では本編、外伝の区別がなくなり、全八巻構成の第六巻として「金の糸紡げば」が登場している。
あらすじ
さいはての地セラフィールド。荒れ野にそびえる天文台と傍らの小さな家。無愛想な父と、親切なホーリー夫婦。八歳の少女フィリエルにとってはそれが世界の全てだった。しかし一人の少年の存在が彼女の平穏な日々を脅かしていく。ホーリーの旦那さんが連れてきた少年ルーンはとんでも無い変わり者だった。すれ違い続ける幼い二人。セラフィールドの一年が静かに過ぎていく。
実はこれが一番最初の話
フィリエルとルーンの子供時代を描く。時系列的にはこれが一番最初のお話だろう。本編よりも更に前。フィリエル八歳の物語。なんとなく『嵐が丘』風味。キャサリンとヒースクリフをちょっとはイメージしているのだろうか。荒れ野セラフィールドの自然描写が美しく、ほんとうの物語が始まる前の静かで豊かな時間がゆったりと流れている感じが巧く書けている。
フィリエルは子どものころから変わってない
もっともフィリエルは子供の頃からお転婆が過ぎる少女だったようで、考えるよりも前に行動を始めてしまう瞬発力が凄まじすぎる。突拍子もない衝動的な行動の数々には頭を抱えそうになった。この年でこれなら確かにこの後の武勇伝の数々も成るほどなと頷ける。本編で描かれることが少なかったディー博士の出番が多いのが見所といえば見所。この人、これから再登場の可能性はあるのだろうか。
おまけ:コミカライズ版もある
桃川春日子によるコミカライズ版が存在する。全七巻+外伝一巻構成。尺的のこの冊数では物語を消化しきれておらず、収まり的に少々苦しいのが難点。
外伝については原作の外伝第二巻に相当する「銀の鳥プラチナの鳥」のエピソードが使われている。