ネコショカ

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『ナポレオンの勇者たち』リチャード・ハワード 邦訳版は二巻で打ち切られてショック!


『ナポレオンの勇者たち』シリーズとは?

本日お届けするのはリチャード・ハワードの『ナポレオンの勇者たち』シリーズである。リチャード・ハワードは1958年生まれの英国人作家。ホラー系のジャンルを得意しているショーン・ハトスンの別名義作品である。

AbeBooksの表記ではHoward, Richard (Shaun Hutson ?)と書かれている。

www.abebooks.com

フランス革命のさなか、流星のごとく登場し欧州を震撼させた英雄ナポレオン。本作は、そんなナポレオンと共に各地を転戦した『ナポレオンの勇者たち』を描いた一連の作品群である。全体で6巻構成となっていると思われるのだが、邦訳版は二巻までで刊行が止まってしまっている(ひどい!)。

よって、今回は邦訳が出ている『囚人舞台誕生』と『激戦!エジプト遠征』についてのみご紹介したい。ちなみにこのシリーズの表紙イラストは生頼範義だったりする。

囚人部隊誕生―ナポレオンの勇者たち

2001年刊行作品。シリーズ第一作である。オリジナルタイトルは1997年刊行の『Bonaparte's Sons』。

囚人部隊誕生―ナポレオンの勇者たち (ハヤカワ文庫NV)

あらすじ

18世紀末。革命後のフランスは人心ともに疲弊しきっていた。混沌の時代は新たなる英雄の登場を促し、若きナポレオンは一歩ずつ権力の階段を上っていく。しかし極度の兵員不足に陥ったフランス軍は遂に囚人の徴用を決定する。貴族出身でありながら獄につながれ、死を待つばかりになっていてた青年ローザールに転機が訪れようとしていた。

フランス革命時代の群像劇

主人公のローザールは革命で家族を断頭台に送られ、自身はみじめなパン泥棒で投獄の憂き目に。そして周囲は穀潰しの犯罪者ばかり。処刑の日を待つばかりの主人公に突然訪れた汚名返上の好機。それは囚人部隊の一人として、ナポレオンと共に戦う事であった!とまあ、ツボだ。個人的なツボにドはまりのこの設定。

元々西洋戦記モノは大好きで、特にナポレオン戦争の時代には興味があっただけに、当時は店頭で見かけるなりの即買いであった。

海戦モノの傑作と言えば「ホーンブロワー」と「ボライソー」

同時代を描いた戦記モノ、往年の名作といえばセシル・スコット・フォレスターの「ホーンブロワー」シリーズや、アレグザンダー・ケントの「ボライソー」シリーズがある。

海軍士官候補生 (ハヤカワ文庫 NV 36 海の男 ホーンブロワーシリーズ 1)

海軍士官候補生 (ハヤカワ文庫 NV 36 海の男 ホーンブロワーシリーズ 1)

 
最後の勝利者―海の勇士 ボライソー・シリーズ〈19〉 (ハヤカワ文庫NV)

最後の勝利者―海の勇士 ボライソー・シリーズ〈19〉 (ハヤカワ文庫NV)

 

両シリーズはナポレオン戦争時代の帆船での戦いを描いた長編作品。いずれも大名作なのだが、イギリス海軍の軍人が主人公で、舞台が海上であるだけにナポレオンの影は薄い(当たり前だけど)。

それだけに、フランス軍の陸上での戦いを最初から最後まで読んでみたいという欲求があって、リチャード・ハワードの『ナポレオンの勇者たち』シリーズは、当時うってつけの作品に思えたわけである。

囚人部隊誕生―ナポレオンの勇者たち (ハヤカワ文庫NV)

囚人部隊誕生―ナポレオンの勇者たち (ハヤカワ文庫NV)

 

激戦!エジプト遠征―ナポレオンの勇者たち

シリーズ二作目。2001年刊行。オリジナルタイトルは1998年刊行の『Bonaparte's Invaders』でる。

激戦!エジプト遠征―ナポレオンの勇者たち (ハヤカワ文庫NV)

あらすじ

第一次イタリア遠征の勝利を経て、ナポレオンが次に目指したのは文明発祥の地、エジプトだった。慣れない船旅で消耗しきったローザールたちが上陸したアフリカの大地。そこで待ち受ける灼熱の砂漠。飢えと乾き。襲い来るイスラムの戦士たち。首都カイロを目指す行軍は熾烈を極める。いつ果てるとも知れぬ熱砂の中での戦いを描くシリーズ第二弾。

 

歴戦の勇者に育ちつつある囚人部隊

前回のイタリア遠征を生き延びてすっかり経験値をあげてしまった囚人部隊の一行。囚人ならではのこすっ辛さも相まって、ナポレオン軍の中でも侮れない実力を持ってしまっている。

しかし実力はありながらも元は囚人、ってことで最前線にガンガン投入されるやら、特殊任務に徴用されるやらでやたらに酷使されてしまう。これはやはり消耗品だからなんだよね。この辺りの辛酸舐めさせられてる描写がなかなか良いのである。

イギリス人作家の描くナポレオン

本作に関してはイギリス人作家がナポレオンを描いているという物珍しさがある。イギリスにとってナポレオンは仇敵なのでは?と、思わないでもないのだが、最近ではもうそんなことは気にしないのかな?読み始めたころはアメリカ人作家だとばかり思っていた。

ナポレオンというと華々しい戦い振りが思い浮かぶが、現実の一般兵士たちにはそんな栄光は全く無縁だった。給料も支払われないまま、過酷な環境下へ連れて行かれ、補給は全て現地調達。革命の名の下に戦われた幾多の正義が多くの流血と略奪を生みだしていった現実を特に意識してこのシリーズでは描写しているようで興味深い。まるでナポレオン礼賛になっていないところは、やはりイギリス人の描いたナポレオン戦記と言えるのかも知れない。

激戦!エジプト遠征―ナポレオンの勇者たち (ハヤカワ文庫NV)

激戦!エジプト遠征―ナポレオンの勇者たち (ハヤカワ文庫NV)

 

三巻以降も出てほしい!!

ということで、本作は残念ながら邦訳が第二巻までしか出なかった。ペーパーバックを読む語学力はわたしには無いので、三巻以降が出ていないのはホントに寂しい。

ちなみにオリジナル版は、こんな感じのラインナップだったようだ。

Bonaparte's Sons 『囚人部隊誕生』

Bonaparte's Invaders 『激戦!エジプト遠征』

Bonaparte's Conquerors 邦訳版未刊

Bonaparte's Warriors  邦訳版未刊

Bonaparte's Avengers  邦訳版未刊

Bonaparte's Horsemen  邦訳版未刊

ナポレオン関連の著作感想はこちらから

当ブログでは、過去にいくつかナポレオン関連著作の感想をあげている。よろしかったらこちらもどうぞ。

ナポレオン四代の足跡を知るならこちら。

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ナポレオン登場以前に活躍していたフランス人将軍のお話。

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