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『フリーランチの時代』小川一水の第二短編集


ヴァラエティに富んだ内容の短編集

2008年刊行作品。SFマガジン等に掲載された作品群をまとめた小川一水の第二短編集。第一短編集である『老ヴォールの惑星』のスケールの大きさに較べるとやや小粒かな。

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

あらすじ

火星探査に訪れた隊員たちを待ち受ける奇想天外なファーストコンタクトを描く表題作をはじめ、植物人間化してしまった主人公が、機械の体を手に入れることで新たな人生をスタートさせる「Live me Me.」、宇宙時代の引きこもり生活を綴る「Slowlife in Starship」、期せずして不老不死社会を獲得してしまった人類の困惑を描く「千歳の坂も」他、計五編を収録した短編集。

以下、簡単に各編をコメント。

フリーランチの時代

2005年作品。火星人との邂逅から永遠の「フリーランチ」を手に入れた人類のお話。重いテーマをあっさりと描く。導入編らしくわりと軽めのテイスト。ネタが命の短編作品ならではのオチ。

Live me Me.

2004年作品。事故で植物人間化してしまった主人公が、義体と高度な演算機能を持つコンピュータセットの助けを借りることで、一般社会への復帰を果たすお話。「攻殻機動隊」みたいに安価な義体が万人に行き渡ってはいないという設定だ。

人間一体を演算で動かすのにはこれ程ののコストと機材がかかるんだってことがよく判る。それでも本体としての脆弱な肉体は依然として必要であるところが決定的に攻殻とは違うか。ラストの切れ味はけっこう好み。

Slowlife in Starship

2006年作品。初出時のタイトルは「ハイフライト・マイスター」。

ローコストで宇宙生活が出来るようになった未来のお話。大質量低速タイプの宇宙船で死なない程度の生活が出来るようになってしまった時代。人付き合いが苦手で上昇志向もリア充も望まない人間が、最低限の労働をしながら引きこもり可能に!

ネットはつながっているし、人型のナビゲーションロボットは同乗しているしで、ニートには最高の時代設定なのかもしれない。っていうか、この時代で生きたい(笑)。SFの素晴らしさである「一瞬で感じさせる悠久の人類の営み」を短い枚数で綺麗に描いて見せた手妻に痺れる。

千歳の坂も

2007年作品。医学の進歩で人が「死ににくくなった」時代のお話。たいていの病気は発見出来れば治癒可能。どこまでも伸びていく平均寿命。逆ピラミッド型を描く人口分布。そんな時代に人はどう生きるべきなのか。子供がいない老人だらけの静かな未来世界図が妙に美しい件。

アルワラの潮の音

本作のみ書き下ろし。実は『時砂の王』の外伝だったりする。この話、時系列いじればどこの時代でも実現出来そうなだけに、いろいろな派生作品が作れそう。もっともっと書いて欲しいぞ。

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

 

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