野村美月の第二作
2002年刊行作品。『赤城山卓球場に歌声は響く』に続く、野村美月(のむらみつき)の二作目である。
デビュー作の『赤城山卓球場に歌声は響く』が2002年の2月。そして本作は2002年の3月。そして第三作である『天使のベースボール』は2002年4月に刊行されているので、デビュー直後にいきなり三作品、三か月連続刊行を成し遂げたということになる。
イラストは戸部淑(とべ すなほ)が担当している。個人的には田中ロミオ『人類は衰退しました』(新装版の方)や、野崎まど『なにかのご縁』のイラストレータという印象が強いかな。
余談ながら、Amazonに出ている『フォーマイダーリン』の書影、メチャメチャ解像度低くて哀しい。豆粒みたいな書影で申し訳ない。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
デビューしたばかりの頃の野村美月はどんな作品を書いていたか気になる方。ほんわか、ゆるふわ、まったりと楽しめるファンタジー作品を読みたい方。肩の力を抜いて楽しめるライトノベルを探している方におススメ。
あらすじ
リリカ・アーヴィングは16歳。田舎のハニーベル村から、彼女がはるばる王都へと上京してきたのは、憧れのユリウス・コールリッジに再会するためだった。しかし超絶美形にして騎士団の花形であるユリウスを狙う姫君たちが都にはいっぱい!せめて圧倒的な美貌を身につけねばと、魔法美容師の見習いになってはみたものの、その先には数々の苦難が待ちかまえているのであった。
ここからネタバレ
ほのぼの冒険行を楽しむべし
『フォーマイダーリン』は、クールビューティな幼馴染みに振り向いてもらうために、魔法美容師を目指すことに決めた、元気一杯少女リリカちゃんの物語だ。
なんだかとらえどころのない不思議小説だったデビュー作に較べると、かなり判りやすい展開。素手でドラゴンにうおおおお!って飛びかかっていくようなトホホちゃんの物語なので、緊迫感とかリアリティとか、ハイファンタージ的な世界としての整合性とか求めちゃダメ。それを本作に望むのは的外れである。
ほんわかまったりとした、癒し系のファンタジーノベルとして、ただひたすら暢気に鑑賞すべきお話であろう。
なお、本作中には、僅かではあるがミステリー的な要素が組み込まれている。これは今になって考えると、その後の野村美津作品のテイストを、そこはかとなく暗示していたように思えるのだけど、深読みのし過ぎだろうか。