佐藤賢一の直木賞受賞作
1999年刊行作品。佐藤賢一の五作目。第121回の直木賞受賞作である。ちなみに同時受賞タイトルは、桐野夏生の『柔らかな頬』であった。
1994年に書かれた佐藤賢一のデビュー作、『ジャガーになった男』は戦国時代にスペインに渡った一人の男を描いた異色の作品だった。しかし二作目以降は、『傭兵ピエール』 『赤目のジャック』『双頭の鷲』と、一貫として、フランスを舞台とした歴史小説を続けて書いてきた。『王妃の離婚』はこの作家のフランスモノとしては四作目にあたる。
集英社文庫版は2002年に登場している。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★(最大★5つ)
海外、特にフランスを舞台とした歴史小説を読んでみたい方、小説の中でくらいは、格好いい中年のオッサンの活躍を楽しみたい方、歴史的人物の意外な組み合わせの妙を堪能したい方におススメ!
あらすじ
かつてはカルチェ・ラタンきっての神童と言われたフランソワもいまではうらぶれた田舎弁護士。失意の過去から未だ立ち直れずにいるこの男が偶然傍聴したのは王妃の離婚裁判だった。被告は王妃ジャンヌ・ドゥ・フランス。原告はフランス国王ルイ12世。圧倒的に不利な王妃の弁護に志願するフランソワ。失われた誇りを取り戻すため男は闘う。
ここからネタバレ
今回もメチャ熱い話
あらすじ書いてみるだけで熱い内容である。以前に読んだ『傭兵ピエール』も並々ならぬ熱い男の生きざまを描いた作品だったが、本作でもその辺の期待は全く裏切られることはない。人生も半ばを過ぎて、もう劇的なことは自分には起こらない。血を熱く滾らせるような経験はもう無いのだろうと枯れ果てていたかに見えた主人公が、王妃の弁護を通じて、かつての光り輝いていた情熱を取り戻していく。こういう話を書かせるとサトケンはホントに上手い。
リーガルサスペンスとしての面白さ
本作では更に加えて法廷劇の面白さが加わり、無敵の完成度を誇っている。
王と王妃の離婚は愛情だけの問題ではない。政治、外交、相続とさまざまなしがらみが絡んでくる国家レベルの大事件なのである。複雑に絡まった利害関係を解きほぐし、時には弁舌で、時には恫喝も交えて依頼人の期待に応えていく。
最後は予定調和的なラストに泣かされるんだけど、こうなるとわかってても泣かされてしまう豪腕にはやはり感服なのである。
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