『天使のベースボール』シリーズ概略
本日お届けするのは野村美月の初期作品である。野村美月といえば「文学少女」シリーズでブレイクしてからの活躍ばかりが目立つが、それ以前にもいくつか作品を残している。必ずしも名作!とは正直言い難い作品も多いのだが、「文学少女」シリーズの紹介に入る前に初期の作品群をかいつまんでご紹介したい。
『天使のベースボール』は一巻が2002年、そして二巻が2003年にそれぞれ刊行されている。「卓球場」シリーズ 、『フォーマイダーリン! 』に続く、野村美月としては三作目の作品である。イラストは尾崎弘宜が担当。
作品が古すぎて、書影が小さいのしか出ないのが残念……。
『天使のベースボール』1巻のあらすじ
琴宮まりあの人生は順風満帆だった。名門聖クララ女学院に付属幼稚園の頃から在籍。短大を卒業後は織川グループ総帥の長男慶吾の元へ嫁ぐことが決まっていた。しかし、父親の会社が倒産したことからまりあの人生は音を立てて崩れていく。生きていくために、泣く泣く男子校の教師となり、野球部の顧問まで引き受けた彼女だったが、そこは野獣の群れが集う恐るべき学園だった。
お嬢さまヒロインの受難劇
お嬢様育ちのヒロインが、家業が傾き、フィアンセには捨てられて、流されるままに男子校の野球部顧問になってしまうという、かなりベタな展開。あまりにありがちで、マンガ的なストーリーで判りやすいのだが、いくらなんでもストレート過ぎるよ。
お約束的なパターンの王道を外さずにキッチリ決めるところは決めてくるので、ストレス溜めずにサクっと読めてしまうのはいいところ。あとがきで書いているわりには、野球の楽しさがあまり伝わってこなかったのが、なんとも残念。
『天使のベースボール』2巻のあらすじ
資産家の家庭に生まれ、何不自由なく育ち、あとは許嫁と結婚するだけ。そんな人生の絶頂期に実家が破産。許嫁にも捨てられて、生活のために教師として生きることを選んだ琴宮まりあ。しかし赴任した翔之原高校は野獣群れ集う男子校。しかも野球部顧問に担ぎ出されたまりあを部員たちのセクハラ攻撃が襲う。貞操の危機から果たして彼女は逃れることが出来るのか。
今だとセクハラで怒られそう
太宰君はいくらなんでも、今回はやりすぎ。それはもはや性犯罪である。それでも、許しちゃうヒロインが度量広すぎる。裏ヒロイン(たぶん)の愛称リリィこと樋口百合夫が実は、真の萌えキャラなのではと思い始めた今日この頃。ちなみに物語的に、野球は更にどうでもよくなっている(笑)。ヒロインのイラストの出来が魅力の80%を占めている印象。
野村美月も最初期の頃はこんな作品を書いていたのだと思うと、感無量とも思える一作なのであった。