続篇グインサーガ17冊目!
2020年刊行作品。前回の146巻『雲雀とイリス』が2019年10月刊行だったので、147巻の登場は2020年の5月くらい?と予想していたのだが、ちょっと予想が外れた。刊行間隔としては9か月も空いてしまった。この執筆ペースだと2020年はこの一冊で終わってしまいそうな気がする。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
なんでナリスがいまさらグインサーガの表紙を飾ってるの?と気になって仕方がない方(でもここから読んでも意味不明だと思うので131巻あたりから読んでみて!)、モンゴールの残党組のその後が気になる方、スーティ&ドリアン、異母兄弟のその後を知りたい方におススメ。
あらすじ
シルヴィア、ディモスの捜索を一時打ち切り、クリスタルからの一時撤退を決意したグインは、サイロンへの帰途で奇妙な人物に出会う。一方、アグラーヤ王ボルゴ・ヴァレンはクリスタルへの派兵に執念を燃やしていた。そして、イシュトヴァーンのゴーラ不在を突いて、旧モンゴールの残党一派が遂にトーラスで蜂起する。
ここからネタバレ
この巻で起こること
さて、今回の147巻『闇中(あんちゅう)の星』だが、アルド・ナリスが遂に表紙を飾った。続篇グインサーガとしてはアルド・ナリスが表紙を飾るのはもちろん初めて。 お話的にメッチャネタバレだけど、続篇が始まってから17冊目だし、もう隠しても仕方がないと思ったのだろうか。
って、まあ、この人物が本当にアルド・ナリスなのか未だ確定はしてないけどね。
ちなみに、アルド・ナリスが表紙に登場するのは、栗本薫時代の正伝からカウントすると2003年の88巻『星の葬送』以来。つまり死んでからは初(そりゃそうだ)。
外伝からカウントすると2012年の外伝20巻『ふりむかない男』以来になる。でも、まあこちらは若き日のナリスのオマケエピソードだけど。
では、例によって、章ごとにどのような事件が起きたかをまとめておこう。
グイン、クリスタルから撤退
あらすじに「アルド・ナリスの妖しい力を前に、グイン一行はいったんクリスタルを離れることにする」ってあるけど、人外のアモンと対峙した時でさえ引かなかったグインが、シルヴィアはともかく、ディモスは行方知れず、リンダも虜囚状態になっているのアッサリ引くのは、作劇上の都合という感が強いなあ。
もちろん、グインがシルヴィアと向き合うことを、心の奥底では避けている。というのはあるのだと思うけど……。
グインが、クリスタルで拾った孤児たちは、アドリアン探索で近くまで来ていたカラヴィア公騎士団に託されることに。カラヴィア公騎士団の皆さんは、アドリアンの末路を見なくて幸せだったかもしれない。
そしてシルヴィアに強い執着心を抱くアウロラが、グインの制止を振り切ってクリスタルに戻り、キタイの魔導士カル・ハンの術中にハマってしまう。アウロラにしては短慮な行動のように思える。けど、そもそもシルヴィア探索がグインに同行した理由だから、ぎりぎり許容範囲だろうか。
いちおうナリスの配下に居る、キタイの魔導士カル・ハンがたびたび登場するのだが、キタイの魔導士ってみんな名前が似ているせいもあってか、ほとんど区別がつかない。最初期のカル・モルくらいかな、ちゃんと覚えているのは。
ドライドン騎士団のパロ派兵が決まる
アグラーヤ王ボルゴ・ヴァレンは、パロ派兵が沿海州会議で否決されたものの、ドライドン騎士団を雇用してクリスタルに送り込む決意を固める。ドライドン騎士団はヴァラキア人が多いけど、カメロンの私兵集団みたいなものだった。イシュトヴァーンへは恨み骨髄だろうから、言われなくても喜んでクリスタルへ行くだろうなあ。復讐に燃えるブランもこれに参加。しかし、相変わらずファビアンが何を考えているわからない。
更にヴァレリウスの同行も確定。ようやく「あのお方」と対決する気になったか。もちろん魔力貯蔵庫のアッシャもついていく模様。ヨナは残るみたいだね。
そしてドリアン救出パーティ、スーティ、琥珀、ウーラ、グラチウスがヴァラキアに帰還。琥珀によって便利アイテム化されていたグラチウスがようやく解放される。グラチウスは監視下に置いて、このままにしておいた方が、悪さをしなくて良いと思うけどね。便利だし(笑)。なお、ザザとウーラは黄昏の国へ帰還。
スーティは当面おとなしくしてて欲しい。いくらなんでも三歳児が活躍するのは無理がある。しばらくは、つかの間のスーティ、ドリアン間の兄弟の絆が育まれる期間になるのではと思われる。
アストリアスはフロリーと久しぶりの再会。ちょっとフラグ立った?アストリアスとスカールは初対面だったかな?
モンゴールの残党がトーラスで蜂起
ドリアンを奪われて、旗頭を失ったアリオンら、モンゴール残党一味。どうするのかと思ったらニセモノを仕立てて無理やり決起した!どう考えても負けフラグだよ。有力なキャラもいないし、強い後ろ盾も持っていないようだし、最悪の結末しか予想できない。ゴダロ爺さんたちが巻き添えを食わないことだけを祈ってる。
一方、カメロンを殺してしまってから廃人状態(俺は悪くない!)のイシュトヴァーンが、ナリスに扇動されてまたやる気を出し始めた雰囲気。最近のイシュトヴァーンは、自分の意思がなくて、周囲の強キャラに操られるだけの存在になっている。生きたキャラクターではなくなっている感があってホントに残念。
グイン、ケイロニアに帰還
カル・ハンの暗示にかかって再三グインを襲うようになってしまったアウロラ。このままではヤバいだろうということで、まじない女のオルダナ婆が登場。『七人の魔導士』事件以降、サイロン(まじない小路)の魔導士人材が枯渇気味なので、新キャラ補充という意味合いがあるのではないかと思われる。再登場ありそう。
ここで世捨て人ルカの予言が再度提示される。
闇の中の娘に御手をさしのべぬよう。もしこれを此岸へひき上げれば、嫉妬と絶望の双子を産み《闇の聖母》と成さしめるだろう
グインサーガ続篇147巻『暗中の星』p263より
グインは間違いなくシルヴィアを此岸へ呼び戻そうとするだろうから、この予言はきっと成就してしまう筈。シルヴィアの受難は果てしなく続きそうである。
また、サイロンへの帰途で、グインのモノローグ形式で、ナリスと古代機械についての現状認識が示されている。まとめてみるとこんな感じ。
- パロの古代機械はグインがヨナに命じて既に停止させている
- ヤンダル・ゾッグの築く新都シーアンの心臓部には、古代機械と操縦者が必要
- 古代機械をシーアンの心臓部として使うには、再始動させる必要がある
- グインは古代機械を再始動させることができる
- 現在のアルド・ナリスは古代機械のマスターとしての能力は失っている
となると、やはり古代機械マスターとしてのグインが引き続き狙われるってことなのかな?現在のナリスはヤンダルとは別の思惑をもって動いているようだし、イシュトヴァーンを操れるのであれば、第三勢力として存在感を増してくる可能性がある。
ちなみに次回のグインサーガ148巻のタイトルは『トーラスの炎(仮題)』(帯に書いてあった)。旧モンゴール残党組にとっては、嫌な予感しかしないタイトルである。
今冬以降発売予定とあるので、早くても2021年2月くらいか?
※2021/9/12追記
147巻が2020年7月発売だったので、なんと新刊が一年以上出てない!ここまで新刊が出ないと、作者の体調が心配になってくるのだけれど、、大丈夫なのかな?
※2022/6/25追記
ググった結果、早川書房の『SFが読みたい! 2022年版』の「2022年のわたし」に五代ゆうのコメントがあったことが判明。以下引用。
グイン続篇、昨年は一冊も本を出せなかったので、今年はがんばっていきたいところです。先へすすめば進むほど責任というか重みが加わってきてなかなか大変ですが、自分を叱咤して参ります。
『SFが読みたい! 2022年版』p123より
これを読むと執筆にかなり苦労されている様子?果たして2022年中に新刊は出るのか?
※2022/9/11追記
Amazonに2022/11/2発売で情報が載りましたね。続篇グイン、なんとか続いてくれるみたい。しかし二年四カ月も間が空くとは。。。
40年分のネタバレまとめ記事も書きました