碓氷優佳が再登場!
2008年刊行作品。碓氷優佳(うすいゆか)を探偵役とする、シリーズの二作目。『扉は閉ざされたまま』の続編にあたる作品である。最初は祥伝社のノン・ノベルからの登場であった。
祥伝社文庫版は2011年に刊行されている。現在読むならこちらの版だろう。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
石持浅海(いしもちあさみ)作品のファンの方。犯罪者の視点から描かれるタイプのミステリが好きな方。とことん空気を読まない、ドエスの女性探偵役に徹底的に追い詰められてみたい方におススメ。
あらすじ
ソル電気を一代で立ち上げた創業社長日向貞則は医師から余命六ヶ月を宣告される。その時彼の脳裏によぎったのは「これで殺して貰える」。そんな感慨だった。社員の梶間晴征は共に社を立ち上げた親友の忘れ形見。その梶間に自分を完全犯罪の上で殺して貰いたい。着々と殺される準備を進めていく日向。しかし、一人の女性の訪問がその計画を大きく狂わしていく。
ココからネタバレ
被害者が完全犯罪を望む
過去の罪を精算するため、自らがかつて死においやった男の息子に、あえて殺害される道を選ぶ日向貞則。願わくば完全犯罪を成し遂げて欲しいと願う彼は、「犯人」の犯罪が成功しやすくなるようさまざまな手助けを影ながら仕掛けておく。一方の梶間も、積年の恨み晴らさでおくべきかと殺す気満々。何事もなければ、そのまま社長は梶間に殺されていた筈なのだが、ここで例によって究極的に空気を読まない女、碓井優佳が登場する。
碓氷優佳は空気を読まない
日向の仕掛けた作為の数々を瞬く間に看破していき、彼が誰に殺されようとしているのかすら読み解いていこうとする碓井優佳。嫌になるくらいののKYぶりが今回も健在。前作『扉は閉ざされたまま』では殺人事件の現場である密室のドアを開くこと無しに事件を解決する離れ業を見せた石持浅海だが、今回は犯罪すら起きる前のつばぜり合いを倒叙形式で描いてみせている。
面白い着目点といえばそうなんだけど、やっぱり犯罪は起こってからナンボというか。鍵となる過去の因縁もありきたりなので、深みもなく。単に碓井優佳の嫌~な女っぷりだけが鼻につく。コロンボにしても、古畑任三郎にしても、倒叙モノの探偵役ってのはだいたい性格悪くないとやってらんないんだろうが、彼女の最後の選択は納得がいかない。それはあまりに上から目線に過ぎるのではなかろうか。
ドラマ版が存在した!
本作はWOWOWにて2008年にドラマ化がなされている(知らなかった!)。Amazonプライムに入っているようなので(現時点では)、気になる方はチェックしてみては。
キャストは以下の通り。
碓氷優佳:松下奈緒
梶間晴征:窪塚俊介
境由美子:奥貫薫
小峰哲:大杉漣
日向貞則:夏八木勲
監督は香月秀之、脚本は後藤法子が担当している。