自身の体験を元にした糖尿病小説!
2006年刊行。『ラス・マンチャス通信』『忘れないと誓ったぼくがいた』に続く、平山瑞穂の三作目。
帯のコピー曰く、なんと世界初の糖尿病小説らしい。33歳の若さで糖尿病と診断されてしまった作者自身の経験に基づくオートフィクション(自身について書かれた小説)なのだそうだ。
2009年に新潮文庫版が刊行されている。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
糖尿病になりそう、なるかも、なったらどうしよう、既になっている!そんな糖尿病についての関心が高い方。ご家族やまわりの人間が糖尿病になってしまった方。平山瑞穂の意外な側面について知りたい方におススメ。
あらすじ
平凡な会社員であった片瀬は、急激な体重減少と異常な喉の渇き、倦怠感を覚え遂に内科医の診断を受ける決意をする。その結果は重度の糖尿病。二週間の緊急入院。そして更なる二週間の教育入院で、片瀬は糖尿病患者としての生きるノウハウを学んでいく。しかし、それは長きにわたる闘病生活のはじまりに過ぎなかった。
ここからネタバレ
読んでいると他人事ではない気がしてくる
糖尿病と言えば、肥満体の中高年がよくかかる成人病というイメージを持っていたが、この作品の主人公は痩せ形体型。しかもまだ三十代前半だ。従弟に糖尿病罹患者がいるわたしとしては、まったく油断が出来ないではないか!
本作は糖尿病の診断を受けてしまった主人公が、妻の助けを得ながら涙ぐましい節制生活を送り、幾たびかの破綻を迎えながらも糖尿病との折り合いをつけ、生きていく目処をつけられるようになるところまで描いていく。
実用性のあるノウハウ小説としての面白さ
糖尿病の教育入院ではどんなことをするのか、経験に基づく献立メモ(コピー可となっている)、インスリン注射の打ち方、糖尿病に関しての医療体制の実情等々、とにかく知らないことばかりなのでその点は実に面白い。実際に、役に立っている方もいそうな気がする。
医療系の内容ではあるものの、小説仕立てになっているので読みやすい。糖尿病の恐ろしさを知ることが出来る良書と言えるだろう。しかし、小説として盛り上げるためなのだろうけど、浮気相手とのお色気シーンは余計なのでは?ちょっとあざといのではと感じさせられた。このエピソードまでもが実話だったらスゴイと思うけど。その辺はどうなんだろうね。
Kindle版がおススメ
なお、本書のKindle版はKindle Unlimited対応(2018/12/6現在)なので、登録されている方はすぐに読めるのでおススメである。
糖尿病サイトでの体験記があったのでついでにご紹介
医薬品メーカー、ノボ ノルディスク ファーマが運営している糖尿病サイトにて、平山瑞穂のインタビュー記事が掲載されていたので、併せてご紹介しておこう。小説の中では書かれていない、さまざまなご苦労をされていることが良くわかる。
私の糖尿病生活 ~糖尿病とともに生きる~ 平山 瑞穂さん 【前編】
私の糖尿病生活 ~糖尿病とともに生きる~ 平山 瑞穂さん 【後編】