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『『クロック城』殺人事件』北山猛邦の「城」シリーズ一作目

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第24回メフィスト賞受賞、北山猛邦のデビュー作

2002年刊行作品。第24回のメフィスト賞受賞作品。作者の北山猛邦(きたやまたけくに)は1979年生まれのミステリ作家。本作『『クロック城』殺人事件』がデビュー作となる。メフィスト賞応募時のタイトルは「失われたきみ」だった。

ノベルス版では「読者への挑戦」付きの袋とじ加工が施されていた。この話はとにかくトリックが肝。うっかりページをめくった時に208頁のトリック解説図が見えてしまったらすべてが台無しなので、そのための配慮なのではないかと思われる。

文庫版は2007年に登場している。解説は有栖川有栖が担当。解説文のタイトルは「解説ーー<ゲシュタルトの欠片>の騎手」だった。

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

また、『『クロック城』殺人事件』から始まる、北山猛邦の以下の作品は「城」シリーズと呼ばれている。

ただ、直接的なストーリーの繋がりはないので、どの作品から読み始めても問題はない。ただ、北山猛邦の作家としての成長の経過を見ていくうえで、刊行順に読んでいった方が変化が分かって興味深いのではないかと思われる。

残り三作についても、あとで感想追加するかも。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

独特な雰囲気を持つ特殊な建築物が舞台の本格ミステリ作品を読んでみたい方。終末の世界、特殊な近未来設定に惹かれる方。北山猛邦の最初期作品を読んでみたい方。メフィスト賞受賞作が気になる方におススメ。

あらすじ

終末の時を迎えようとしている近未来の日本。探偵南深騎(みなみみき)は少女黒鴣瑠華(くろくるか)の依頼を受け、幼馴染の志乃美菜美(しのみなみ)と共に「クロック城」へと赴く。過去・現在・未来を示す3つの大時計を壁面に持つこの城では、瑠華の父、黒鴣博士の元、奇怪な研究が続けられていた。城の幽霊退治を任された深騎は、その内部を探索する中で殺人事件に遭遇する。二つの密室の中で発見された二つの首無し死体。いかにして犯行は行われたのか。

ここからネタバレ

登場人物一覧

  • 南深騎(みなみみき):主人公。幽霊退治専門の探偵
  • 志乃美菜美(しのみなみ):南深騎の幼馴染
  • 黒鴣瑠華(くろくるか):依頼人の少女。不眠症
  • 黒鴣心史(くろくしんじ):「クロック城」の主。瑠華の父親。研究者
  • 黒鴣未音(くろくみおん):瑠華の姉。眠り続ける女
  • 黒鴣鈴(くろくりん):瑠華の弟。ナルコレプシーを患う
  • 黒鴣修史(くろくしゅうじ):瑠華の叔父
  • 黒鴣伶馬(くろくれいま):修史の子。瑠華の従兄弟
  • セティア・ドール:心史の妻。故人
  • 天巳隆三(あまみりゅうぞう):「クロック城」の執事
  • 天巳護(あまみまもる):隆三の息子
  • クロス(くろす):十一人委員会、第三の天使
  • 御都りえ(みとりえ):クロスの助手
  • 恋宮(こいみや):黒鴣心史の助手
  • 五月キキョウ(さつきききょう):民間団体SEEM所属

メインのコンビは南深騎と志乃美菜美のふたり。これに依頼人である黒鴣瑠華がセカンドヒロインとして絡む。黒鴣家には母親のセティア・ドールの家系由来の、睡眠にまつわる遺伝病が伝わっている。姉の未音は眠り姫状態(ずっと眠ってる)、妹の瑠華は不眠症、弟の鈴はナルコレプシー(突然眠ってしまう)と、それぞれに特異な事情を抱えている設定だ。

終末の世界で起きる連続殺人

『『クロック城』殺人事件』の時代設定は20世紀末。巨大な太陽黒点が発見され、地磁気の乱れから地球規模の大災害が起きている。1999年の9月に世界は終わるとされている。本作は終末の世界を舞台としたミステリ作品なのである。

治安を維持する政府の機能は失われ、SEEMと呼ばれる「世界を守る」ための民間組織が武装し暗躍。一方で、十一人委員会と呼ばれる「天使」によって組織された集団が「真夜中の鍵」を求めて活動を続けている。

主人公の南深騎は、ゲシュタルトの欠片と呼ばれる幽霊的な存在を視認し、ボウガンで狩る能力がある。パートナーである志乃美菜美は過去に投身自殺をしているのだが、その後も実体を伴い南深騎と共に行動している。憑依霊みたいな存在?と思ったのだけど、深騎以外の人間にも見えて話せているようなので、なんとも微妙な存在だったりする。

物理の北山、大技のトリック

本作最大の見せ場は、三つの大時計を使った豪快かつ大胆な物理トリックにある。作中では図解入りで説明されており、絵面の説得力が半端ない(見た瞬間に、ああそうかと納得できてしまう)ので、ノベルス版でこの部分が袋とじになってしまったのは妥当な判断だったかと思われる。「首時計」の発想も衝撃的だった。

殺人に至るまでの事情や、特殊過ぎる動機については、黒鴣家ならではの血統の呪いとでもいうべき事情が関わってはくる。

だが、時代設定が世紀末であったり、ゲシュタルトの欠片と呼ばれる幽霊が存在。謎の武装集団SEEMとか、外連味たっぷりの十一人委員会とかが出てくる割には、こうした特殊設定が全然メイントリックに関与してないのはある意味凄い!ミステリ的な部分は至ってシンプルにして明快。特殊設定ミステリなのかと思わせて、あくまでも通常世界の論理で事件の謎は解けるようになっているのだ。

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