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『熊の場所』初の短編集、ミステリのくびきから解き放たれた舞城王太郎

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舞城王太郎の四作目

2002年刊行。「群像」掲載の二作に書き下ろし(「ピコーン!」)を加えて単行本化したもの。作中の短編「熊の場所」は第15回の三島由紀夫賞の候補作品である。

舞城王太郎(まいじょうおうたろう)としては、『煙か土か食い物』『暗闇の中で子供』『世界は密室でできている。』に続く四冊目の作品。また、本書が初めての短編集ということになる。

単行本版の表紙部分は特殊な素材で作られていてモコモコした感触が楽しめた。なかなか見られない凝った装丁になっている。「熊の場所」⇒「熊」⇒「ぬいぐるみ」⇒「モコモコ」という連想なのだろうか。

講談社ノベルス版が2004年に刊行。さすがにもこもこ触感はノベルス版では再現できなかった。

そして講談社文庫版は2006年に刊行。単行本→ノベルス→文庫となるにしたがって、表紙が可愛くなくなっているような気がする。 

熊の場所 (講談社文庫)

ちなみに2022年刊行、小川哲の『君のクイズ』でも言及されていたことで、ちょっと話題になった。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

「奈津川サーガ」以外の舞城王太郎作品を読んでみたい方。舞城王太郎の短編作品を読んでみたいと思っていた方。自分の中の「熊の場所」について考えてみたい方。強烈な個性を発散する独特の文体を堪能したい方におススメ。

あらすじ

猫を殺し続ける友人の秘密に気付いた僕が体験した奇妙な体験を描く表題作を始め、街に日夜出没するバット男。この変質者の子供を身籠もったと言い始めた同級生。騒動に巻き込まれた主人公の思いを描く「バット男」。好きな男を更正させるために性技に磨きをかけるしっかり者のわたし。しかし思わぬ事件の発生が二人の運命を暗転に叩き込む「ピコーン!」。三編の短編を収録した作品集。

ここからネタバレ

ミステリのくびきから解き放たれた舞城

メフィスト賞出身者でありながら文学誌「群像」に作品を書くってのはやっぱり異例なことだと思うのだが、確かに一連の「奈津川家サーガ」をミステリと言い切るのも考えてみれば無理がある気がするので、どっちかというとそもそも舞城作品ってブンガク寄りなのかな?

ミステリのくびきから完全に解き放たれた本書では、凄絶な舞城力が充満していて、行間から滲み出るむやみやたらな筆力にとにかく圧倒させられる。根元的な人間欲求であるエロだとか、バイオレンスなんてのを、てらいもなく突き詰めていくとこんな作品になっていくのか。下品でしょうもない話なのに、終わった頃にはなぜだか感動しちゃってる。実に不思議な作品群なのである。

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